戦うことでしか未来が開かれない

とにかく迫力ある、かつ映像的にも魅力的なバトルシーンが続いて物語を進めていきます。脳裏に鮮やかに映し出されるのは少年漫画のような異形・異能の戦いです。

主人公は八彩という『キメラ』の少年。普段の姿は少年ですが、八柱の異形の神をまとうことで戦闘モードに入ります。その戦闘能力は人智を超えた圧倒的な神の力、対する敵もまた神の力を得た異形のキメラ。この存在同士があらゆるシーンですさまじい戦闘を繰り広げます。

この戦闘シーンがなんといっても今作の魅力。独特の世界設定、世界観に沿った語り口、それを超える戦闘シーンの華麗さと派手さが素晴らしい。

主人公の脇を固めるキャラクターたちもまた魅力的。芯の強い女性たちや、悲しい運命を背負いながら革命に命を捧げる仲間たちなど、主人公の八彩に助けられ、助けて、やがてそれは大きなうねりとなって巨悪に立ち向かっていきます。

物語として戦いの連続が続き、爽快感は抜群です。ですが同時に彼らがもつ宿命、戦うことでしか未来が開かれない悲しさ、虚しさ、という背景がじんわりと沁みてきます。もちろん戦う中で犠牲はついてまわるものです。それでも彼らはひたすらに信念を貫き、戦いを続けていきます。

長編では実にいろいろな作品に挑戦している作者様ですが、こちらはバトルシーンに特化した一風変わった作品でした。ですがどの作品にも根底にエンターテイメントを意識した、読者を楽しませたいという気持ちが満ち溢れていて、個人的にとても好きな作家さんです。この作品もその例にもれず、エンターテイメントあふれる素晴らしい作品でした。

ぜひ読んでみてくださいね!

その他のおすすめレビュー

関川 二尋さんの他のおすすめレビュー1,824