苦しみが押し寄せてくるけれど、それでも……

この物語は、行き倒れた山羊飼いの少年が裕福な家の子息である青年と出会うことから始まります。
この少年は美しく、自分の意思に反して人を惹きつけてやまず、色々な人が彼の虜になります。
けれど、彼自身はとても一途で、心に決めた人だけを想い続けます。
それこそ、どんな目に遭っても。
彼の行く手には困難が待ち受けていますが、それでも、満身創痍になっても、本来の彼が持つ善良さは失われません。
だからこその苦悩も見事な筆致で描かれています。

作者様が初めて書かれた長編とのことですが、とてもそうは思えないほどの作品です。
19世紀末フランスの空気の中にリアルな人の葛藤が見えます。
読み終えた後は満足感に浸れること間違いありません。
文学小説がお好きな方にもお勧めしたい作品です!

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