没落した華族の青年が、手元に僅か残った品を売り物に「五階百貨店」へ店を出す。華やかであるが一般的と言い難い品々はなかなか売れない。しかし、商品に目を輝かせ、夢見るように手を伸ばすお客様がいる。百貨店へ買い物に出る浮足立った気持ち。ただ、欲しいものを買うだけではない。並べられた商品を眺めてときめいてしまう。そんな気持ちを思い出す作品でした。
『五階百貨店』。それは店名ではなく、地名だそうです。明治初期、ここに聳える五階の塔のそばに茣蓙を敷いて物を売る人々が現れ、ここへ行けば手に入らないものはないと言われたとか。さて、このお話は、家が傾き家財を売ろうとする青年の視点で始まります。彼から品物を買おうとする人の方にも何やら事情があり――?明治という時代の色が存分に楽しめる本作。こういうものが書ける方は少ないといつも思います。一瞬でその時代に連れて行ってもらえます。皆様も明治の風情をお楽しみください!
もっと見る