人間に造られた、悲しき生命体。生まれながらに強大な力を持ちながら、より強大な力に何度も翻弄され愛する者とも引き離される悲しき少年。それが「八彩」です。
「神社」と呼ばれる、一見旧時代的に見える組織が最先端の科学と権力により支配する世界。
本作は、その支配を覆すために戦うレジスタンスと共に、生まれ育った組織に抗い戦い続ける八彩の姿を描く、本格バトルアクションです。
独特の世界を背景に描かれるバトルシーンは、とにかくどれもカッコいい!
八彩の姿はどこまでも強く、優しく、美しく、悲しい。読者を惹き込まずにはいられないほどの魅力にあふれています。
ヒロインが二人いるのもいいです。
一人は八彩と真の愛情を交わす、儚いほどに美しい美桜。
もう一人は、ごく普通の少女でありながら戦いに身を投じ、読者に近い目線で八彩を見つめ、八彩に真っすぐに語りかけるサクヤ。
タイプも立場も全く違う二人の女性キャラが、物語に華を添えると同時に八彩の魅力をさらに引き出してくれます。
八彩の前に立ちはだかる強敵たちも、文句なしに強くて圧倒的!
果たして八彩は勝てるのかと、何度も本気でハラハラさせられます。
数々の戦いの果てに見える、八彩という少年の姿と、彼を生み出した「人」の姿とは。
胸の高鳴りが止まらない、本格バトルエンタメをぜひ最後までお楽しみください。
神社がキメラを作り、その力によって国を恐怖により統治している世界。
しかしそんな中にも、それに立ち向かおうとするレジスタンスがありました。そして、キメラでありながらキメラと戦う、八彩という少年がいました。
レジスタンスや八彩が神社と戦うというのが、本作の基本的な作りとなっているのですが、特徴のひとつが、作品全体から放たれているディストピア感。
恐怖による統治というだけでもろくなものではありませんが、敵の主力であるキメラもただ恐ろしいだけの怪物というわけでなく、どこか悲しい運命が見え隠れ。
レジスタンスのメンバーは容赦なくボロボロになっていきますし、勝利はしても、失うものも大きい。
ですがそんな過酷な状況だからこそ、それでも懸命に戦う面々の力強さに心が震え、この世界をなんとか変えてほしい。そしてできれば、一人でも多く生き残ってほしいと、ハラハラしながら読み進めることができました。
辛く苦しい戦いの先に、勝利は、平和は、そして笑顔は待っているのか。
どうか、祈りながら読み進めていってください。
物語の舞台は、自分たちが作りだしたキメラの強さを武器に神社組織が世の中を支配している世界。
キメラの強さを武器にするがゆえに、神社組織はキメラを神として崇めています。
そんななか、このような恐怖政治を嫌う人々がレジスタンスを結成し、神社組織を打倒しようと計画します。
そのレジスタンスの活動の中心メンバーに八彩という少年がいるのですが、彼の正体は実はキメラ。
キメラを崇める世界だというのに、それを打ち壊そうとするキメラがいる。一体どうして、彼は神社組織に対抗するのか……
異世界ファンタジーですが、研究所でキメラが生まれるなどSFの要素もあるので、SFや現代ファンタジーがお好きな方にもおススメです。
バトルシーンが多いお話なのですが、情景が丁寧に書き込まれているので、読んでいて何が起きているのかが目に浮かぶようでした。
神だった主人公の八彩が、どうしてレジスタンスに身を投じることになるのか……ぜひ、ご自身で読んで確かめていただきたいです!