記憶が剥がれ落ちる晩年の光景。それはモザイクのように。

儚さと遣る瀬無さが伝わる掌編です。

忘れたくない記憶がモザイク加工に蝕まれるさまは、
モザイク模様の薔薇窓が不可抗力に壊れるような切なさです。

生きてきた証をひとかけらずつ失っていく現象が、淡々と描き出されています。
筆致には純文学的な美しさがあります。

人生の終わりに私たちはモザイクを見るのかもしれません。
我が身に起こり得るエンディングの予習に、是非ご一読下さい。

その他のおすすめレビュー

宵澤ひいなさんの他のおすすめレビュー271