欠落したもの。不完全なもの。
時として、そのようなフォルムに魅力を感じる者が居ます。
この物語の生物教師が、そうであったでしょうか。
たしかに此処は生物準備室です。
読み終えた瞬間、実感します。
生物教師は何を準備していたでしょうか。
生物準備室で少女が見たものとは、いったい。
小道具の「クッキー缶」が果たす演出力が秀逸。
それは教師が蔵(しま)う「L ' écrin (宝石箱)」になるのか、或いは……。
書き過ぎるとネタバレになってしまいます。
このあたりでとどめておきましょう。
端正な文脈が血管を震わせるような、ゾクリとする新感覚ホラー。
酷暑の黄昏時に読みたい温度と湿度の物語です。