きっと誰のヒーローにもなれない

作者 陽澄すずめ

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★★★ Excellent!!!

結論から言えばやっぱり僕も作中の主人公と同じくどこかの誰かが手を上げるさ、と高をくくって手を上げないのだろう、と思う。

だけれど、この世界は英雄に依らなくても誰かの犠牲で成立している。

そのことは、本当に、今、認識するべきだ。

なんてタイミングでこれを読んだのだろうと、ゾクゾクした。

コロナという共通敵を持ってしても世界は一つになんてなりはしないんだ、とリアルタイムで見せつけられることになろうとは。

もしもコロナに掛かって免疫を得てください、それが世界を救うことになるのです。といわれたらあなたは手を上げることが出来ますか?

僕は、やっぱり出来ません。

世界の変質の一端をまざまざと書き出した良作です。

★★★ Excellent!!!

本作は短編でありながら、長編を一気読みしたような余韻が残ります。

ネタバレするので、内容は掛けませんが、
タイトルの意味を理解した時に考えさせられるものがありました。

作者様の作品は読むほどに、他の作品が気になって仕方なくなります。

構成力の高さと文章力が凄いので、引き付けられるのでしょうね。

短編なのでサクッと読めるので、これを機に読んで見て下さい。
そして少しでも感じ取って頂けたら、嬉しいです。

ぜひ、お試しください


★★★ Excellent!!!

大きな危機が目の前に迫った時、人間の心は。
何か、ウイルスに怯える今の状況とも重なる気がして、背筋が冷えるような気持ちで読みました。

自分が難を逃れれば、それでいいのか。
任務に向き合わねばならない人、その苦痛を受ける運命に遭った人だけが、苦しめばいいのか。
何一つできないまま、不運に遭った人々を「不運だ」と遠くから見ていることしかできない私たち。
自分の中にあるその冷酷さに、自分自身に唾を吐きたくなるような気持ち。

——けれど、社会はいつも、誰かを踏み台にしながら当たり前に回っている。
これでいいのかと思いつつ、やはり何もできない——やりきれない循環がただ頭の中で巡る息苦しさを覚えずにいられません。

自分の周囲だけが守られれば、それでいい。
そうやって誰かの苦しみの上に生きている「該当者以外」の残酷さを叩きつけるようにさらけ出す、深い苦みの残る物語です。

★★★ Excellent!!!

いずれ世界を滅亡へと導く『空の割れ目』。
主人公はその割れ目を塞ぐ『適合者』として選ばれた15歳の少女……のクラスメイト、『僕』。
僕は知っている。
世界を救う救世主にどんな未来が待っているのか。そして自分自身の立ち位置も――

救いようのない現実を前にして、傍観者でいるしかない無力な自分。
中学生という主人公の未熟さが優しく、残酷でもあり。
けれど未熟だからこそ割りきることなく、彼女の存在は傷としてでも彼の心に残った。
そのことに微かに甘い救いを感じます。

読みやすいのに心に迫る。
息苦しいのに鬱屈としない。
切ない喪失感と、苦い記憶。
実際に見たわけでもないのに真っ黒な割れ目の走るあの空が心に残る、余韻を感じさせる物語です。

★★★ Excellent!!!

ヒビの入った青空、どこか世紀末感ある世界で、常に犠牲が必要な物語。
ある日、生贄としてクラスメイトが選ばれたことをきっかけに、主人公を通じて読者が”自分ならどうすべきか”を考え出します。

まるで特攻隊のような周りの風潮に、自分だけは知っている選ばれた後の未来。
果たして、君の代わりに自分がなると言えるのか、自分を投げ出すことが出来るのか。誰だって死にたくないし、自分が可愛い。けれど、世界の為に犠牲は必要不可欠。

巧みな心情描写により、訴えかけられるものを感じます。
本作を読了した後、きっと貴方は、自分自身を強く見つめ直すと思います。

★★★ Excellent!!!

世界を救うために生贄になる少女。
その詳しくを知っている少年。
『罪悪感』『同情』『恋心』。少年が抱いていた感情は複雑で、一言では言えません。
でも、それを巧みな心理描写で繊細に綴っています。
こういう話には正しい答えがありません。それをうまくまとめる力量が凄いです。
皆さんもぜひ読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

『ヒーロー』ではなく『傍観者』と『当事者』が居ます。
地球の災害を阻止するべく、選ばれし脳波を持った少女が英雄と言う名目で犠牲になります。
事実を知る少年の同情、そして悔恨の念。
痛快なヒーローの活躍劇では、ありません。
しかしながら英雄の自己犠牲で救われた世界が淡々と、えがかれるのです。
心に疑問符を投げかけてくれる物語です。生命の重さを考えさせてくれます。
ひたひたと深い読後感をもたらす短編を是非。

★★★ Excellent!!!

世界を救う英雄になった誰かの話、英雄に憧れた誰かの話、英雄に助けられた誰かの話。そうした輝かしい英雄譚が溢れるなかで、この小説は非常に異質です。

物語は空に割れ目ができ、世界が終焉にむかうところから始まります。
世界を救えるのは選ばれし《適合者》だけ。

学校で実施された適性検査の結果、選ばれたのは中学三年生の少女でした。
それを知った『僕』は友達のいない彼女に喋りかけ、任務までのあいだ、一緒に帰るようになります。

しかしながら、選ばれたものは世界のための《犠牲》となる運命なのです。
この《犠牲》という言葉。普通の英雄譚ならば、戦いに赴かなければならない、と続きます。
ですがこの小説においては、そうではありませんでした。
『適合者』は装置に繋がれ、意識もない植物状態となって、生かされ続けるのです。命を賭けた戦いに巻きこまれるならば、まだいい。そこにはみずからの運命を選択し、最悪の結末を拒絶する権利が残っています。勝てばいいのです。どれだけ無謀な戦いであっても。
ですが『適合者』にはなにもない。
戦いもなければ、冒険もなく、試練もなければ挑戦もない。

それでもなお、『適合者』は英雄なのです。
彼女は確かに世界を、救うのですから。

『僕』が彼女に懐いた感情は、なんだったのか。憐みだったのか。罪悪感だったのか。それとも――――

これを読み終えたあなたならば、どうでしょうか。
世界のために英雄となれと言われたら。

…………
……

あなたは、英雄になりたいですか。

★★★ Excellent!!!

世界の危機からみんなを守るための『適合者』。それはたしかに、ヒーローの定義に該当するのかもしれない。
しかし自らヒーローたらんと願い、そうなりたいと思う人はどれほどだろう。

事実を知る『僕』は、ヒーローに温かい言葉を投げかける。
『適合者』はきっとそれで、いくらか救われただろう。気休めに過ぎなかったとしても、少なくともマイナスではない。
ならば彼も直接的に、あるいは間接的にヒーローだ。
だがその言葉は、本当に温かいのか。

世界を救ってくれるのは誰か。誰もが問いかけ、その登場を熱望する――が。誰が自分をヒーローとして推せるだろうか。
そう、あなたも。

★★★ Excellent!!!

 目の前に、絶望的な運命を突きつけられた人がいて、そこに手を差し伸べるヒーローが現れて。

 そんな奇跡が一切ない、どこまでもリアルな物語。

 なんの覚悟もなく手を伸ばしてしまった少年に少女が放つ一言は、どこまでも私の心を抉りました。だって、私自身にも、ただ興味本位に手を伸ばしてしまった少年少女の頃があったのですから。

★★★ Excellent!!!

たった十五歳の少女に課された、あまりに重すぎる使命。
そばでただひとりその意味を知っている、平凡な少年。

少年の視点で描かれる二人の物語は、ときになにげなく、ときに淡々と進みます。
数少ないやりとりの中に、中学生らしい、未熟で不器用で、力を持たない者の心の叫びが垣間見えてきます。

自分が少年の立場だったら。
それとも少女の立場だったら。
色々なことを考えさせられる作品です。
きっと、大人だって、誰のヒーローにもなれないのかもしれません。

★★★ Excellent!!!

不思議な世界観の上に、重厚な人間ドラマを置いた作品です。
ご都合主義的な展開は一切無く、人の愚かさと無力さが描かれています。

それでも読んでいて鬱々としないのは、風景の描写の美しさや、主人公の若さのお陰でしょうか。
最期までひと息に読みました。

割れ目が消滅した後、適合者はどうなったのか。
そもそも本当に消滅したのか。
また現れないか。
主人公に業が巡ってこないか。

その後の物語まで想像させる余韻のある作品です。面白かったです。

★★★ Excellent!!!

 突如として現れた黒い「空の裂け目」。その裂け目が広がって臨界点に達すれば、世界は終わってしまうのだという。そしてその裂け目からは、絶えず有害物質が降り注ぎ、空気中を舞っている。そのため、外出時には防護マスクが必須だった。主人公はその世界の終焉を、まだ先の受験のように現実味がないものとして考えていた。クラスの少女が「適合者」に選ばれる前までは。
 主人公だけが知っている、「適合者」の末路。そして、自分だけが安全地帯に立っているという事実。
 主人公は少女と親しくなっていくが、それが後ろめたかった。少女はシングルマザーに育てられ、下の兄弟の面倒もみていた。そんな彼女は任務のため、一人で家や学校を去らなければならない。
 そしてついに、少女と過ごす最後の時間がやってきた。少女は主人公に、一つの頼みごとをするのだが……。その懇願は、まるで彼女の悲鳴のようだった。選ばれてしまった彼女と、選ばれることのない主人公。彼女のたった一つの願いが、主人公の心に傷を残す。
 あの悲鳴のような懇願に、答えられたなら、自分はどうしていただろう。
 
 この作品によって突き付けられているのは、読者自身の倫理観や正義感の真贋なのかもしれない。短編にしてこの深さと重み。圧巻とはまさにこのことだ。

 是非、是非、御一読下さい!

★★★ Excellent!!!

世界の終焉が近づいた世界。辺りを漂っている有毒物質、通称『空のかけら』が充満している。

適合者は定期的に選ばれ、世界を救う糧となります。世間的にはヒーローですが、内情を知ってる主人公にはそう思えなかった。

世界を救うヒーローとはなんなのか。適合者に自分は立候補できるのか。色々と人間の真意に問う作品です。