誰かの命と引き替えに世界を救えるセカイの中で、僕はただの卑怯者だった。
世界を終焉へ導く『空の割れ目』を塞ぐため、救世主たる『適合者』に選ばれたクラスメイトの高橋さん。
他のみんなが「ヒーロー誕生だ」と騒ぎ立てる中、僕だけは知っていた。『適合者』となった者が、どんな運命を辿るのか。
だからある日の帰り道、僕は思わず彼女に声をかけた。
「僕にできることがあったら、何でも言って」と。
これはかつて十五歳だった僕の、決して消えない心の瑕疵の話。
※サークル『菖蒲ノ庭』さまの『セカイ系アンソロジー』への寄稿作です。