誰かの苦しみの上に生きている、「該当者以外」の残酷さ。
- ★★★ Excellent!!!
大きな危機が目の前に迫った時、人間の心は。
何か、ウイルスに怯える今の状況とも重なる気がして、背筋が冷えるような気持ちで読みました。
自分が難を逃れれば、それでいいのか。
任務に向き合わねばならない人、その苦痛を受ける運命に遭った人だけが、苦しめばいいのか。
何一つできないまま、不運に遭った人々を「不運だ」と遠くから見ていることしかできない私たち。
自分の中にあるその冷酷さに、自分自身に唾を吐きたくなるような気持ち。
——けれど、社会はいつも、誰かを踏み台にしながら当たり前に回っている。
これでいいのかと思いつつ、やはり何もできない——やりきれない循環がただ頭の中で巡る息苦しさを覚えずにいられません。
自分の周囲だけが守られれば、それでいい。
そうやって誰かの苦しみの上に生きている「該当者以外」の残酷さを叩きつけるようにさらけ出す、深い苦みの残る物語です。