細やかで丁寧な情景描写と心情描写。まるで映像を追っているような没入感。
- ★★★ Excellent!!!
異世界へ旅立った息子のご両親のその後、という興味深い設定の作品です。
異世界の存在を何も知らぬまま、息子の失踪を受け入れねばならない両親の苦悩。読み進めるうちに、読み手はファンタジー的な気軽さからいつしか遠く離れた場所に佇んでいることに気づきます。息子を突然失った親の動揺、不安、悲しみ。息子は生きているのか、もうこの世にいないのか。その原因は……彼らの苦悩の一つ一つが、ひしひしと胸に迫ります。
情景と心情の描写が大変丁寧で細やかです。文字を読んでいるはずが、いつしか映像を追うような没入感でページをめくってしまいます。
この世界の人間を異世界へ召喚する女神は、その家族へ言葉を尽くしたメッセージを残すべきである。読後にそんな思いを噛み締めずにいられない、味わい深い短編です。