血の滾るような恋情と、その想いを貫くために血生臭い道を掻き分け猛進していく女性の、凄まじいほどに激しい一生を描いた短編です。
奔放で破滅的な母親の血をそのまま受け継いだように、熱く濃い情念を胸に秘めた彰。母が帝に愛され、後宮に召し上げられたことで、彼女は皇帝の息子である兄達とともに成長します。そんな日々の中で、彼女が愛したのは——。
受け継がれた母親の血が身体の中で滾るかのような彰の壮絶な生き方と、想い人への愛の深さは、読み手の胸に強く迫ります。密やかに彰と想いを通わせながら、無念の中で息絶えた男の彰への愛もまた、静かながら痛いほどの深さで描き出されます。
ただ一つの願いだけに生き、散った女。彼女と永く愛し合うことが叶わぬまま逝った男。二人の想いが遺したものの儚い美しさが、いつまでも余韻に残ります。
この上なく濃く熱く、同時に果てしない虚しさと儚さを味わわせてくれる、ずしりとした読後感の物語です。