まだ一章を読んだだけですが、書かずにはいられませんでした。
随想録のユーモアに隠し切れない格式の高さが魅力の本作品です。
作者様の教養があり余り、かつコメントの方や前レビューの方の文章が大変巧緻に整えられてされているのに、私がうっひゃぁたまげたなぁとレビューを書くこと自体だいぶ気が引けるのですが、激烈にやばいくらい良いです。読んでいる内になんだか勝手に賢くなったような気がしています。本当に頼もしいものを見ると笑いが止まらなくなるといいますが、この作品がそうでした。日常のふとした思い出を語る、文学的で才気に満ちたエッセイ、おすすめです。
もう無くなって行けなくなった場所。
嫩(わか)い日の微笑ましくも少し苦い記憶。
双眸(ひとみ)を見開くよりも伏せることで見えてくる風景があります。
それは「懐古」というエッセンスを付加されて美化されがちですが、此処に記される風景は、おそらく作者様が目蓋の裏で見て感じられたもの、そのままの鮮度で立ち現れて、現世を苛むでもなく励ますでもなく、文面として其処に在り続けます。
「随想」という自由な形式で書き綴られたエッセイは『夜の言語』で書かれています。さて『夜の言語』とは何でしょう。気になられた御方は是非、壱話と弐話をどうぞ。
何らかのエンパシーを受け取られ、読み進めたくなる御方は、『夜の言語』で繋がることのできる、作者様の「同好の諸兄姉」で在る可能性が高いかと思われます。
眠られぬ夜に悩みつつ、そんな夜を愛する方々に推薦します。