天の墜ちる世界で

比喩でもなんでもなく、刻々と天頂が降下してきたら。
まず、閉塞感がたまらないだろうなとか、パニックものかなと推測しながら読みすすめたのですが……
ゆっくりゆっくりと、終わりが近付く感じ、覚えがありませんか？

そう、科学者団体が発表している終末時計です。
わたしは、なにを？そんなことをふと考えさせられました。


あなたは「今」、なにをしていますか？

　終末世界の世界観や雰囲気はよかったと思います。

天が落ち、終わりが近づく世界。その時がじわじわと確かに迫ってくるのが読んでいても分かって悲しくなります。
天が落ちてくる、天使も落ちてきたという設定が秀逸。また、世界の終わりを前にした人の弱さを丁寧に描いているのが良いです！

本作の淡々とした語り口調、世界の終末を思わせながらも感じさせない悲壮感や危機感。
それでいてどこか空虚さを感じさせるのに、読後感は清々しく、スラスラと読めました。
書き手のセンスが随所に満ちており、世界観の描写も素晴らしかったです。

天が堕ちてくるようになった世界。人々は狭まってしまう空間を食い止めようと柱を建造したり、打開するための研究に打ち込んでいた。

化学者のニコルもその一人で、新物質の研究をしていると落ちてきた天使と出会う。身一つで空を飛べる彼女を調べれば、天を浮かせることが出来るのではと考えるが…！？

終末を迎える世界で果たして研究は成功するのか。残りの時間をどう過ごすのか。
問い掛けられる作品です！！

空は染まる。
気圧は上がる。
世界の終わりが危惧される世界にて、
形而上は形而下に。
墜落した天使は科学者と共に還れぬ天を仰ぐ。
その心には寂寞より、むしろ平穏を感じる。
墜ちそうで墜ちない天の許、
天使と過ごす時が一日でも長く続いてほしい。
そう願いたくなる短編でした。

古典SFを彷彿とさせる斬新な世界観のアイデアと科学的推測、必見です！！

　「天が落ちてきた」という現象は、現実的で、実際的で、物質的なことだった。現在は天を天柱という柱で支えている。化学者である主人公は、そんな終焉間近の世界で、天使を拾った。天が落ちてきたから、天使も落ちてきた、ということらしい。主人公は天使に名をつけて、一緒に生活する。主人公は天使のことを調べれば、現在の終末を回避できるのではないかと思ったが、結果はいまいちだった。
　そんな中、世界ではこれまでとは違ったことが起こり始めた。この変化を嫌うように、主人公と天使は外の世界に出る。やがて訪れるであろう人類の終末。退廃的な空気に満ちた世界で、天使と科学者は何を感じるのか。

　「天が落ちる」という発想…続きを読む