概要
隣の席になった、教室で孤立している御手洗真。
放課後の理科室で、泉は顕微鏡を覗く真に出会う。
顕微鏡越しに見えた、彼の世界とは。
🔬✨
誰もが、自分の世界を持っている。
人には伝わりにくい、世界を生きる人もいる。
誰もが同じ世界で生きる必要は無いのだけれど。
それぞれの世界を、みんなで分かち合えたら。
遠のいた過去の記憶に、ピントを合わせる。
思いの外、鮮やかに目の前に甦る。
顕微鏡を覗いたみたいに。
これは、過去の私からの手紙。
未来の私からの、手紙。
かつて10代だった、あなたへ。
10代を生きる、あなたへ。
想いを、届けられますように。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!中学生という危うい時代を丁寧に描いた物語
主人公の泉は自分の本心を表に出すことが苦手な女の子です。彼女はある日誰もいない理科室に、クラスで浮いていて、虐めの対象になっている真をみつけます。それから二人は、夕方の理科室で静かな時間を共有していきます。
一つ一つ丁寧に綴られるエピソードは、薄いガラスで出来ているようです。残酷だったり脆かったり、正義感に押しつぶされそうになったり。色んな登場人物がもたらすエピソードに泉は心を揺り動かし、必至に世界とのバランスを取ろうとします。
私はあまりコメントを書く方ではありません。でも、一話ごとに心がワーッと突き動かされ、その思いを作者であるプラナリア様に聞いて欲しくなってついコメントを書きました…続きを読む - ★★★ Excellent!!!そこを覗いたら、何が見えるのでしょう?
遥か悠久の昔、私にも10代の頃がありました。
イケてないモブな男性の10代でしたので、それ程、書く事もありません。それでもその時の思い出は眩しい物です。
今、思えば何でそんな事をしたのか理解できない事ばかりですが、その積み重ねで今があるのですものね。消せないけれど、思い出したくないことが山のようにありますが。
このお話は、私のようなモブな10代ではなく、繊細な女性と男性の10代の頃のお話です。クラスや集団に馴染めない、少し毛色の変わった彼らは、どのように世の中を渡ってゆくのでしょう。
このお話のタイトルである「顕微鏡」。覗いたら何が見えますかね? - ★★★ Excellent!!!あるとわかっていても、触れられないもの
池の水を一滴、プレパートに載せたりシャーレに入れたりして顕微鏡をのぞくと、そこにはふだん見ることのできない世界が広がっています。
ほとんど透明な、よくよく目を凝らせば、あるかなしかの濁りを認める、へんてつもないただの水なのに。
透明なもの、緑色のもの、茶色のもの、柔らかそうなもの、固そうなもの、丸いもの、四角いもの、つながったもの、活発に動くものもあれば、ゆっくりと這うもの、水の動きに合わせて動揺するものもあり、顕微鏡の中には多様な生き物でひしめく、静かな世界が広がっています。
そのなかで、ガラス細工のようなひときわ精巧ないきものがあなたの目を引きます。かすかな毛をふるわせて、水の中を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カクヨムで初めて泣きました。
素晴らしい作品です。絹糸のような繊細な表現力に、ひたすら圧倒されっぱなしでした。こんなに美しく透き通っていくような綺麗な文章を書くことができる方には、例え書店に並ぶ数々の書籍の中からですら、見つけることは難しいでしょう。中学生という一番多感な時期、誰もが感じていたであろう、クラスメイト同士のちいさな違和感、心のざわめき、何が正解なのか、主人公である泉が感じる、どうしたらうまくバランスが保てるのかという、ぐらぐらと揺れ動く答えの出ない葛藤の日々……。キャラクターひとりひとりの個性も確立されており、大変レベルの高い作品だと感じました。カクヨム内で様々な作品を読んできましたが、私はこちらの作品で、…続きを読む
- ★★★ Excellent!!!覗き込めば生まれる、想像もしなかった新しい世界
見ようとしなければ見えない、それぞれのもつ特別な世界。
勇気を出してそれらを覗き込んだ時、自分が元々もっていた世界と化学反応を起こして、ほんの少しだけ新しい世界が生まれる。
それを繰り返していくことこそが「生きる」ということなのかもしれないなと、この作品を読んで感じました。
この作品の中で描かれているのはどれも拾い上げるとなんてこともない、探せばどこにでも落ちていそうな瞬間たち。でもきっとこんな一瞬こそが我々にはとても大切で、また特別だった……。
あなたももう一度だけ体験してみませんか? そんな煌めく一瞬を。
泉の目を通して、美しい情景描写とともに。