モグラの穴

作者 柊圭介

125

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★★★ Excellent!!!

この世の地獄って何だろう?
現実に存在する地獄とは?

読んだ後にそんなことを思いました。
同時に現実を地獄だととらえる機会ってそれなりにあると。
今が最悪、いや、昔はもっとひどかった、将来にも希望なんて見えないし。
若い時期、年を取った時期、この世を地獄のようだと感じたことのある人は多いはず。
それをもっとも多感に感じるのは中学生くらいなのではないのかなと。

この物語には読んでいてもつらいシーンが多々あります。
人の、特に集団が放つ、狂気にも似た無邪気の皮をかぶった残酷さ。
それは子供ばかりでなく、大人たちもまた形を変えた残酷さを持っています。
その中で傷つく少年の心が痛々しく胸に迫ります。
もう息苦しいほどの、地獄のような現実世界が描かれています。

これはもちろん『物語』です。架空の話ではあるのですがリアリティーが満ち溢れています。
これは想像なんかじゃなく、現実でも十分起こりえることなのだと思えます。
作者がちゃんと人間というものをよく見て、人間そのものを書いているのが伝わります。

この物語が語ろうとしているのは何か?
私もまだそれを考えているところです。
そういう力を持った作品だということです。

みんな楽しい作品が好きだと思います。
でもたまにはこういう作品に触れることも大事な事じゃないかと思うのです。
誰かにとっての地獄、それを知ることは大事なことなのです。

ちょっと支離滅裂なレビューでしたが、ぜひ読んでみてください!

★★★ Excellent!!!

 主人公は、日本の中学校に通うことになった紘一。
 フランスのパリで9年間生活していた彼は、父親の転勤で日本へ帰り、地方の中学校へ編入することになったのですがそこでは様々な問題が起きます。
 外国暮らしが長かったことに対するいじめや「言葉の壁」問題、紘一が同性愛者であるが故の葛藤。中学二年生という多感な時期であるということがさらに拍車をかけ、それらの問題が大きくなっていきます。

 多分『モグラの穴』は読む人を選ぶ作品だと思います。全ての人が「良かったね」と言えるようなものではないでしょう。
「寂しさを超えた孤独」「己の中に潜む日本ではない別の国で育まれたアイデンティティを理解されない悲しみ」「いじめがあっても、周囲に相談できず、自分の中に押し込め続ける怒り」「そして彼の身に起こった出来事とこれまでの全てを否定されたときに発現した、マグマが吹き上がるかのような激情」等々……読んでいるとこのような負の感情が渦巻きます。

 しかし紘一に起こる一つひとつの出来事は、きっと他人事ではありませんし、似たような経験をしている人たちも沢山いると思います。
 そのため一人でも多くの人が紘一の気持ちに寄り添ってくれたら嬉しいですし、彼の身に降りかかった出来事について、考えてくれたらいいなと思わずにはいられません。

★★★ Excellent!!!

 主人公の「コーイチ」は見た目は「日本人」、でもフランスで長年暮らし、中身はどちらかといえば「フランス人」。そんな彼が14歳のときに、親の事情により日本へ移住します。
 序盤で語られる、彼の目から見る日本という国の描写は、人によっては新鮮で、人によってはひどく共感するものかもしれません。それは日本のほうが良いとか、外国のほうが良いとか、そういうことではないのです。
 その違いを認めて、受け入れられる社会であれば良かったのですが……物語はそこから、一気に暗いほうへと転がり落ちます。

 同級生、先生、親……きっとそれぞれに事情を抱えているのでしょうが、それらがあたかも全て悪いほうへと作用していくようです。多感な14歳の少年を襲う試練は容赦なく、読み進めるのが辛いこともあるかもしれません。
 一方で、フランス語のほうが慣れている「コーイチ」の一人称で語られる文章の中には、ときにハッとするような日本語選びに惹かれるのもこの作品の魅力です。

 この物語を極端な例と思う人もいるかもしれません。でも、それはどこかしら真実で、実際に誰かが感じている痛みを代弁しているものだと思います。共感も反感も、心当たりがあるから覚えるのではないでしょうか。
 多様性と口で説くのは簡単でも、気づかぬところで他人を傷つけていたりする。それが誰かをこんなにも苦しめ得るということが、読後考えるほどに重く圧し掛かってきます。

 心して読んでください。読み込むほどに、抉られます。それでも多くの方に読んでほしい作品です。

★★★ Excellent!!!

幼少期の十年間をパリで暮らした紘一は家族の帰国でいきなり日本の中学校に投げ込まれる。帰国子女として身も心もズタズタに傷つけられる紘一の心と叫びはリアル過ぎて、これはフィクション小説なんだと言い聞かせないと読み進められない程の迫力がある。
辛い物語であるからこそ、読めば物語の最後に紘一に沢山の拍手とエールを送りたくなると思う。
一つだけあげるならば、紘一は日本では心も体もあんなに傷つけられたのに、ある人に言われたことを大切に、ある事を一生懸命に勉強し続けている事。別の地で暮らしながらも祖国を思う気持ちは、日本で生まれ育ってぬくぬくと暮らしている私達よりもずっと強いものだと感じます。

★★★ Excellent!!!

 親の都合で帰国子女。生まれ持った性的指向。
 自分の意志ではどうにもならないことが理由で、紘一は酷く貶められる。何も悪いことをしていないのに。誰にも迷惑をかけていないのに。
 剥き出しの自意識に狡猾な残酷さを身につけはじめた子供たちは、自分達との僅かな差異を目敏く嗅ぎつけ、彼を異分子と見做した。多数派であることを振りかざし、暴力に酔いしれ、自分の立ち位置に安堵する。
 彼らは馬鹿な臆病者だ。だからこそ、大人がしっかりと見守り、指導するべきだろう。
 なのに紘一は、大人の無理解にもまた、苦しめられる。教師は綺麗事ばかり。親ですら本当の自分を見てくれない。守るどころか、理解する努力さえしてくれない。

 紘一の血を吐くような心の叫びが、痛い。 
 胸が潰れそうなほど辛いお話です。(辛すぎて、私は一時離脱しました)
 でも、紘一君は自分の力で幸せを掴みます。
 全てを読み終え、ホッと胸を撫で下ろしたあとで、自分に何ができるのかを改めて考えさせられました。
 多くの人に読んでもらいたい作品です。

★★★ Excellent!!!

日本の学校制度や社会制度の問題。帰国子女や外国にルーツをもつ人たちの置かれたつらい状況。そしてLGBTの問題。学校での熾烈ないじめ。家庭崩壊。それらの、現代社会に横たわる種々様々な問題をギュッと凝縮した濃密な23話です。重いテーマですが、現実の問題として向き合っていかなければならない話であると感じます。

★★★ Excellent!!!

 同性愛、そしてフランスと日本の対比というテーマを非常に巧くまとめた作品。
 帰国子女である紘一が偏見からいじめられるところに始まり、誰にも自分のことを分かってもらえない中で出会ったジェレミー先生に恋をしてしまったりと、まさに切なくてほろ苦い青春の美しさを体現したような物語でした。
 

★★★ Excellent!!!

主人公の抱える問題は非常に解決困難で、周囲の了承も得にくいもの。かなり本文は極端な描写がありますけれど、そこに、その感情に、嘘はないと思います。理解が高い国、低い国があります。日本はものすごく、驚くほど低い。そこで希望を見つけたのだから、一応は良しとせねばならないのかもしれません。時代が経過し、偏見が少なくなれば、また違う道も模索できると考えます。

そして、この作品を読んでもっとも言いたいことは、『イジメをする奴はゴミだ』ということ。容姿、性格、行動、その他、どんな理由があってもイジメはしてはいけません。イジメるくらいなら関わらなければ良いのです。イジメを受ける側もそう望んでいるはず。日本人は全員中流家庭の先進国民だとすりこまれていますが、その実、蛮族です。もっとその事実と向き合わなければいけないと思います。

とても教訓を得ることのできる素敵な作品でした。

★★★ Excellent!!!

主人公は9年フランスで暮らし、親の都合で日本の中学校に編入してきた帰国子女。

個人的な話だが私は所謂ハーフなので、ときどき人にきかれる。「子ども時代にそれが理由でいじめにあったか?」と。
これに答えるのは難しい。
ある意味ではもちろんノーだし、ある意味ではイエスだ。

はじめましての相手からは様々な質問が飛び交う。見た目からして外国人のハーフにとって、それは「おまえは日本人か? 外国人か?」という確認作業であったことに、大人になった今は気づく。
見た目は違えど、中身は日本人ならば、仲良くしてやろう。そう明言はされずとも、ちゃんと感じ取れるのだ。だから必死で「心は完全に日本人です」と言い続ける。そうすれば、受け入れは楽になる。

この物語の主人公は、まったくちがう。
見た目も国籍も日本人。
けれど考え方、受け取り方、感覚はどうしても日本になじめない。当たり前だ。生まれ育ちはフランスだもの。彼はフランス人なのだ。まちがいなく。

けれども日本に来たからには、尋問に付き合わねばならない。そしてうっかりまちがえた答えを返したせいで、宣告される。
「おまえはガイジンだ」と。

もう日本人と外国人を切り分けることさえやめてほしいと思う気持ちもあるのだけれど、とにかく読んでほしい。
つらいけれど、ラストはきちんと心温まるように構成されているから、どうか安心してこの物語を知ってほしい。
きっと気づきや発見があるはずだから。

★★★ Excellent!!!

いや、全ての帰国子女がこうだというわけではありませんが、思春期を迎えた彼らの多くが本帰国後に直面する壁、そして葛藤がまざまざと描かれています。もちろんそれだけではありませんが、同じ立場の子を持つ親として、心に響くものがありました。
多くの方に読んでいただきたい作品です。

★★★ Excellent!!!

膝小僧に貼ったバンドエイドを剥がして、塞がりかけた傷にふれるようなひりひり感と、抑えた語り口で語られる残酷な日々。それでも息を詰めて惹きつけられ、通読せずにおられませんでした。

 佐伯紘一さん、
 陰ながら貴方の幸福を願って止みません。

祈りたくなる。

ぜひ、一読を。

★★★ Excellent!!!

拝読している間じゅう、何度息が詰まったか分かりません。
狭い教室が世界の全てだったあの頃の閉塞感を思い出すと共に、主人公の受けた傷をまるで自分の事のように生々しく感じました。

長い外国生活のせいで日本語が上手く使えないということだけでなく、日本の空気そのものに馴染めないということ。
クラスメイトたちから『異物』と見做された主人公の、屈辱や憤りや遣る瀬なさ。
学校だけでなく家庭の中にも居場所がないこと。
徐々に心がひび割れていくのが、手に取るように分かりました。

溜め込んでいたものがついに爆発した後、主人公は繰り返します。「僕が悪いんだ」と。
腹の底から叫びたい。
君は悪くない!!!!
君は何一つ悪くない!!!!

心身を壊すほど辛く苦しいことばかりでしたが、手を差し伸べてくれるわずかな大人の存在が希望の光に思えました。
ラスト、大人になった主人公の選んだ道に、涙が出ました。
どうかこの先も幸せと祝福を。そう願わずにはいられません。

この物語を書ききった作者さまも、すごいと思います。
凄まじい作品を、ありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

若い時分にイギリスに渡った。必死で順応し、帰国した成田空港で愕然とした。自分の国のはずなのに、自分の国に見えない。周囲の人のちょっとした仕草までが、何か違っていて、とにかく戸惑う。
耳に入ってくる日本語がとっさに理解できない。
リバースカルチャーショック、と呼ばれるそれを、私は20代で経験した。
見た目が変わらない、日本語も流暢に話せるからこそ、周囲は待ったなしで「日本人」としての行動を期待する。しかし、それがスムーズに行えないからこそ、こちらは困惑する。
ギアを変えなくてはならない、と理解した。そしてギアチェンジは決して簡単ではなかった。とっくに成人していてさえだ。

この物語の主人公である佐伯紘一は、中学校2年生で、それを経験する。しかも日本の田舎の学校というとてつもなく同質性が高い場所で。排他的な日本の中学の描写もさることながら、おそらく自分たちはフランス語を高いレベルまでは習得していない親たちの描写がリアルで、つらく、痛い。
現地文化に馴染みきれない親たちはしばしば「日本」が子供にとってどれほど異国なのかに気づかない。

痛く、苦しい、成長の物語であると同時に、そのあまりのリアルさにやるせない。とにかく、やるせない。

★★★ Excellent!!!

人は平等ではなく、生きづらさは確かに存在する。
安定した環境に身を置くのにコストがかかるということだ。それはお金だけでなく、時間や手間や精神的疲労、そういった諸々の負担について。
けれど勘違いしてはいけないのは、コストを支払うのは本人だということ。大人の負担を気に掛ける、それこそ本人のコストとなっている。
主人公は九年フランスで過ごした帰国子女である少年だ。
見掛けは日本人、日常会話はできるけれど、漢字は書けない。買い物、病院、銀行でちょっとした用事を済ませようとした時、行く先々で一回一回説明しなくてはならない・・・・・・想像するだけでストレスだ。
物語の後半、主人公は物理的なガイジンか精神的なガイジンかを選ぶならと語る。読み進めた私は、うん、そうね、と頷かされた。
恥ずかしながらこの国の道は私含めて未舗装で、そのでこぼこを歩くため、少年に身を削らせ、痩せ細らせた。
どうして彼が代償を支払わねばならないのか。どうして――彼が子どもで他に選択肢がなかったから。溜息が出る。

モグラの穴――これはユーモアとペーソス入り交じる比喩なのだけれど――は消えない。
許さなくていいし、許してくれるな、と思う。特にあの同級生らには☆△@?$、インターネットで吊し上げろ、息子娘にやつらの所業を暴いて晒せ! ・・・・・・ぐらいな勢いだけれど、それこそ莫大なコストで、しなくて済むなら、越したことはない。
彼の安定を願うのならば、燃え上がる憎しみではなく、彼や彼の敬愛する師がするように〈学び〉こそが役立つのだろう。
そばにいる誰か、あるいはこれから出会うその人のコストができるだけ軽くなるように。

★★★ Excellent!!!

主人公・紘一は帰国子女の中学生。
フランスで9年も過ごした後に、親の意向で日本の公立中学校へ転入させられました。
そこに待っていたのは、異質な者を嘲笑し吐口にする、同級生集団による容赦のない虐めでした…。

地獄の日々の中、たった一つの安らぎだった人への気持ちさえ否定され。
まだ幼い少年の人間性が、尊厳が傷つけられていく…。
涙や憤りなしには読めない作品です。
少年の、声なき慟哭に読者の心も打ちのめされます。

それでも彼は、自分の手で幸せを掴み取るために行動します。
彼を支えてくれた、数少ない大人たち。紘一にようやく、自分で自分が幸せになれる道を歩き出す時がやってきます。

そこに至るまでの、数多くの絶望。叫び。自分は何者なのかと逡巡する日々。
一人の少年が過ごした、激動の思春期のドラマ。
読み終えた時、多くのことを教えてくれる物語です。

あなたは、そばにいる者たちの言葉にならない嘆き、叫びに気づくことができるでしょうか?

★★★ Excellent!!!

見過ごすのは簡単です。
傍観者は安全です。

見過ごされ被害に遭った少年の心の傷は、
はたして如何ほど、深かったでしょうか。

主人公は帰国子女の十四歳の少年・紘一。
フランス帰りの彼が、日本の公立中学校で目の当たりにした恐ろしき文化が、克明に描写されています。

紘一の繊細な心が、内側からの泣き叫びで罅割れるような、エピソードの数々。

読み進めるうちに、タイトルの『モグラの穴』が意図する現象が浮かび上がることでしょう。
『モグラの穴』は適応できない環境に置かれたときに、誰にでも発生する可能性があり、決して他人事ではないのです。

救いはあると信じましょう。
葛藤の末に紘一が見る光を、是非、多くの方々に見て頂きたく思います。