モグラの穴

作者 柊圭介

101

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★★★ Excellent!!!

日本の学校制度や社会制度の問題。帰国子女や外国にルーツをもつ人たちの置かれたつらい状況。そしてLGBTの問題。学校での熾烈ないじめ。家庭崩壊。それらの、現代社会に横たわる種々様々な問題をギュッと凝縮した濃密な23話です。重いテーマですが、現実の問題として向き合っていかなければならない話であると感じます。

★★★ Excellent!!!

 同性愛、そしてフランスと日本の対比というテーマを非常に巧くまとめた作品。
 帰国子女である紘一が偏見からいじめられるところに始まり、誰にも自分のことを分かってもらえない中で出会ったジェレミー先生に恋をしてしまったりと、まさに切なくてほろ苦い青春の美しさを体現したような物語でした。
 

★★★ Excellent!!!

主人公の抱える問題は非常に解決困難で、周囲の了承も得にくいもの。かなり本文は極端な描写がありますけれど、そこに、その感情に、嘘はないと思います。理解が高い国、低い国があります。日本はものすごく、驚くほど低い。そこで希望を見つけたのだから、一応は良しとせねばならないのかもしれません。時代が経過し、偏見が少なくなれば、また違う道も模索できると考えます。

そして、この作品を読んでもっとも言いたいことは、『イジメをする奴はゴミだ』ということ。容姿、性格、行動、その他、どんな理由があってもイジメはしてはいけません。イジメるくらいなら関わらなければ良いのです。イジメを受ける側もそう望んでいるはず。日本人は全員中流家庭の先進国民だとすりこまれていますが、その実、蛮族です。もっとその事実と向き合わなければいけないと思います。

とても教訓を得ることのできる素敵な作品でした。

★★★ Excellent!!!

主人公は9年フランスで暮らし、親の都合で日本の中学校に編入してきた帰国子女。

個人的な話だが私は所謂ハーフなので、ときどき人にきかれる。「子ども時代にそれが理由でいじめにあったか?」と。
これに答えるのは難しい。
ある意味ではもちろんノーだし、ある意味ではイエスだ。

はじめましての相手からは様々な質問が飛び交う。見た目からして外国人のハーフにとって、それは「おまえは日本人か? 外国人か?」という確認作業であったことに、大人になった今は気づく。
見た目は違えど、中身は日本人ならば、仲良くしてやろう。そう明言はされずとも、ちゃんと感じ取れるのだ。だから必死で「心は完全に日本人です」と言い続ける。そうすれば、受け入れは楽になる。

この物語の主人公は、まったくちがう。
見た目も国籍も日本人。
けれど考え方、受け取り方、感覚はどうしても日本になじめない。当たり前だ。生まれ育ちはフランスだもの。彼はフランス人なのだ。まちがいなく。

けれども日本に来たからには、尋問に付き合わねばならない。そしてうっかりまちがえた答えを返したせいで、宣告される。
「おまえはガイジンだ」と。

もう日本人と外国人を切り分けることさえやめてほしいと思う気持ちもあるのだけれど、とにかく読んでほしい。
つらいけれど、ラストはきちんと心温まるように構成されているから、どうか安心してこの物語を知ってほしい。
きっと気づきや発見があるはずだから。

★★★ Excellent!!!

いや、全ての帰国子女がこうだというわけではありませんが、思春期を迎えた彼らの多くが本帰国後に直面する壁、そして葛藤がまざまざと描かれています。もちろんそれだけではありませんが、同じ立場の子を持つ親として、心に響くものがありました。
多くの方に読んでいただきたい作品です。

★★★ Excellent!!!

膝小僧に貼ったバンドエイドを剥がして、塞がりかけた傷にふれるようなひりひり感と、抑えた語り口で語られる残酷な日々。それでも息を詰めて惹きつけられ、通読せずにおられませんでした。

 佐伯紘一さん、
 陰ながら貴方の幸福を願って止みません。

祈りたくなる。

ぜひ、一読を。

★★★ Excellent!!!

拝読している間じゅう、何度息が詰まったか分かりません。
狭い教室が世界の全てだったあの頃の閉塞感を思い出すと共に、主人公の受けた傷をまるで自分の事のように生々しく感じました。

長い外国生活のせいで日本語が上手く使えないということだけでなく、日本の空気そのものに馴染めないということ。
クラスメイトたちから『異物』と見做された主人公の、屈辱や憤りや遣る瀬なさ。
学校だけでなく家庭の中にも居場所がないこと。
徐々に心がひび割れていくのが、手に取るように分かりました。

溜め込んでいたものがついに爆発した後、主人公は繰り返します。「僕が悪いんだ」と。
腹の底から叫びたい。
君は悪くない!!!!
君は何一つ悪くない!!!!

心身を壊すほど辛く苦しいことばかりでしたが、手を差し伸べてくれるわずかな大人の存在が希望の光に思えました。
ラスト、大人になった主人公の選んだ道に、涙が出ました。
どうかこの先も幸せと祝福を。そう願わずにはいられません。

この物語を書ききった作者さまも、すごいと思います。
凄まじい作品を、ありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

若い時分にイギリスに渡った。必死で順応し、帰国した成田空港で愕然とした。自分の国のはずなのに、自分の国に見えない。周囲の人のちょっとした仕草までが、何か違っていて、とにかく戸惑う。
耳に入ってくる日本語がとっさに理解できない。
リバースカルチャーショック、と呼ばれるそれを、私は20代で経験した。
見た目が変わらない、日本語も流暢に話せるからこそ、周囲は待ったなしで「日本人」としての行動を期待する。しかし、それがスムーズに行えないからこそ、こちらは困惑する。
ギアを変えなくてはならない、と理解した。そしてギアチェンジは決して簡単ではなかった。とっくに成人していてさえだ。

この物語の主人公である佐伯紘一は、中学校2年生で、それを経験する。しかも日本の田舎の学校というとてつもなく同質性が高い場所で。排他的な日本の中学の描写もさることながら、おそらく自分たちはフランス語を高いレベルまでは習得していない親たちの描写がリアルで、つらく、痛い。
現地文化に馴染みきれない親たちはしばしば「日本」が子供にとってどれほど異国なのかに気づかない。

痛く、苦しい、成長の物語であると同時に、そのあまりのリアルさにやるせない。とにかく、やるせない。

★★★ Excellent!!!

人は平等ではなく、生きづらさは確かに存在する。
安定した環境に身を置くのにコストがかかるということだ。それはお金だけでなく、時間や手間や精神的疲労、そういった諸々の負担について。
けれど勘違いしてはいけないのは、コストを支払うのは本人だということ。大人の負担を気に掛ける、それこそ本人のコストとなっている。
主人公は九年フランスで過ごした帰国子女である少年だ。
見掛けは日本人、日常会話はできるけれど、漢字は書けない。買い物、病院、銀行でちょっとした用事を済ませようとした時、行く先々で一回一回説明しなくてはならない・・・・・・想像するだけでストレスだ。
物語の後半、主人公は物理的なガイジンか精神的なガイジンかを選ぶならと語る。読み進めた私は、うん、そうね、と頷かされた。
恥ずかしながらこの国の道は私含めて未舗装で、そのでこぼこを歩くため、少年に身を削らせ、痩せ細らせた。
どうして彼が代償を支払わねばならないのか。どうして――彼が子どもで他に選択肢がなかったから。溜息が出る。

モグラの穴――これはユーモアとペーソス入り交じる比喩なのだけれど――は消えない。
許さなくていいし、許してくれるな、と思う。特にあの同級生らには☆△@?$、インターネットで吊し上げろ、息子娘にやつらの所業を暴いて晒せ! ・・・・・・ぐらいな勢いだけれど、それこそ莫大なコストで、しなくて済むなら、越したことはない。
彼の安定を願うのならば、燃え上がる憎しみではなく、彼や彼の敬愛する師がするように〈学び〉こそが役立つのだろう。
そばにいる誰か、あるいはこれから出会うその人のコストができるだけ軽くなるように。

★★★ Excellent!!!

主人公・紘一は帰国子女の中学生。
フランスで9年も過ごした後に、親の意向で日本の公立中学校へ転入させられました。
そこに待っていたのは、異質な者を嘲笑し吐口にする、同級生集団による容赦のない虐めでした…。

地獄の日々の中、たった一つの安らぎだった人への気持ちさえ否定され。
まだ幼い少年の人間性が、尊厳が傷つけられていく…。
涙や憤りなしには読めない作品です。
少年の、声なき慟哭に読者の心も打ちのめされます。

それでも彼は、自分の手で幸せを掴み取るために行動します。
彼を支えてくれた、数少ない大人たち。紘一にようやく、自分で自分が幸せになれる道を歩き出す時がやってきます。

そこに至るまでの、数多くの絶望。叫び。自分は何者なのかと逡巡する日々。
一人の少年が過ごした、激動の思春期のドラマ。
読み終えた時、多くのことを教えてくれる物語です。

あなたは、そばにいる者たちの言葉にならない嘆き、叫びに気づくことができるでしょうか?

★★★ Excellent!!!

見過ごすのは簡単です。
傍観者は安全です。

見過ごされ被害に遭った少年の心の傷は、
はたして如何ほど、深かったでしょうか。

主人公は帰国子女の十四歳の少年・紘一。
フランス帰りの彼が、日本の公立中学校で目の当たりにした恐ろしき文化が、克明に描写されています。

紘一の繊細な心が、内側からの泣き叫びで罅割れるような、エピソードの数々。

読み進めるうちに、タイトルの『モグラの穴』が意図する現象が浮かび上がることでしょう。
『モグラの穴』は適応できない環境に置かれたときに、誰にでも発生する可能性があり、決して他人事ではないのです。

救いはあると信じましょう。
葛藤の末に紘一が見る光を、是非、多くの方々に見て頂きたく思います。