淡い色のフィルムが巡る園の先、少女の手触りを是非、あなたも……

美しき桜の園に舞う少女の時代。彼女たちを切り取る独特の視点。
交錯する少女の姿と心を、写真と絵画という芸術を媒体に結実させる百合物語。

学園に集う少女たちは『本当にやりたいこと』をやる奔放な精神を有し、時として絡まりながらも心は真っ直ぐに伸びていきます。

『一輪』ではなく『一凛』として咲く花が集まってブーケになります。
それは、ひとつとして同じではない馨しさ。
瑞々しい『少女』の芳香を放っています。

ペールトーンのピンクの印象の『であい』から、着実に磨き抜かれた作者様の言語力が秀逸に、さまざまな色彩を導き出しています。

視点を変えて描かれる少女たちの実像。
危うくも色褪せない自我。

少女時代を思い返して「あのころは幸せだった」と言える人は、少ないのではないでしょうか。この小説の中に生きている各々が「一凛咲き」の少女たちも、そうなのかもしれません。はたして幸せだけで構成されているのかしら。決して、そうではないと思うのです。特有の不安が沈み、心に残ります。

揺れ動く百合の姿を真摯に、おさめ続けている。
そう思わせてくれる物語。ぜひ、ご一読ください。