【夏休みの旅行】
夏休みは5日間与えられた。そのうち3日間は、友人と2人で東京旅行に行く。
しばらくの間、現実逃避できる。この旅行でリフレッシュすれば、異常な行動(第5章【異常な行動】参照)も減るだろう。
今まで休みもろくに出かけたこともなかったから、楽しみだなぁ。
私は張り切っていた。
家から空港までは、私の運転で行った。運転中もそれ以外の工程でも、頭が回らないという感覚はない。何かの記憶が抜け落ちることもない。
事務所にいると、意欲がなくなるけれど、旅行へのやる気は満々だ。
職場にいる時は、変な行動ばかりしてしまうのに、友人の前ではいつもの自分でいる。なんでだろう?その理由は、後に知ることとなる。
東京に到着すると、とにかく遊び回った。お笑いを見に行って、雷門など街中を散策して、横浜まで足を伸ばし、はとバスツアーにも参加した。
友人と決めた行程を回るだけで、気づいたら夜になっている。ホテルに到着するのは、0時を回っていた。
とにかく楽しい。楽しいけれども、人の流れには驚いた。せかせかと走っている人々。田舎者の私が、普段なかなか見ない光景だった。
かなり暑い時期だったので、皮膚がジリジリする。2日目の昼に駅で弁当を食べながら座っている時は、ダウンしそうになった。
東京旅行は楽しいけれども、想像以上にエネルギーを使うのか。元々、心身に蓄えているエネルギーが少なかったのかもしれないが。
もちろん、友人には職場で起きていることや自分の異常について話すことができなかった。
旅行の雰囲気が壊れるかもしれない。職場の愚痴をグチグチ言ってように見えたら、友人も呆れてしまう。「物忘れが激しくて。」なんて、20代前半の私が相談しても友人だって困るだろう。
そんなことを考えてしまって、旅行中、なるべく職場の話はしないようにした。
楽しかった時間はあっという間に終わる。2泊3日が1泊2日のように感じられた。
空港から地元に戻るまで、友人とペラペラと会話しながら運転した。「いやぁ、戻りたくないねぇ。」なんて、冗談混じりで言ったけれども、けっこう本気だ。
本当に心の底から、
「帰りたくねー!」
と思っていた。
帰宅した翌日、体力回復のために1日休みを取ったけれども、休んだ気がしない。
ひたすら、
「明日から職場に行きたくねー!」
とばかり考えていた気がする。
出勤日は容赦なくやって来る。仕方ないから出勤する。
頭が回らない感覚は起きていないが、また1つ変化を感じた。
嫌な出来事に対する耐性が、弱ってしまったのである。
出勤してすぐに、お土産に買っていた雷おこしを職員全員に配る。
すると、シン・課長補佐に「いらないわ」と言われて雷おこしを返却された。
この職場には、つくづくお土産と縁がないなぁ。
(第2章【出張とお土産②】参照)
いつもの私なら、悲しい気持ちはあっても、こんな感じに処理している。
しかし、この度は、返された雷おこしを見ながらものすごく感傷的になっていた。
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