【「潰してやる」①】

職場に行けなくなる1ヶ月前。


Rさんが仕事でトラブルを起こしてしまった。


前年度、Rさんは副担当の仕事ばかりだった。(副担当については、第3章【主担当と副担当】を参照)


前年度は初めて異動してきたことと、休職していた経緯(第3章【休職者の処遇】参照)から業務を軽減されたのだろう。


今年度は、Rさんも主担当の仕事をもらえた。


昨年は、イベントの業務に入れてもらえなかったり(第2章【仕事をもらえなかった日①・②】参照)、いないところで悪口を言われたりと不遇な立場にいたRさん。


仕事を問題なくこなせれば、Rさんの状況も少しは変わるのではないか。私はそう考えていた。


既に説明したが、Rさんは第一印象がふてぶてしい。

それで損をしているのだろうが、話すとけっこう面白い。


そんなRさんと1年間同じ空間で仕事をしてみて、「事務所内で1番話しやすい人だな」と思うようになった。


Rさんは自身の経験から、たまにパワハラを嫌う発言をする。それが私の境遇と重なって、共感できる部分もあったのかもしれない。


だから、Rさんに主担当の仕事が増えたと知った時は、密かに「頑張ってほしいな」なんて応援していた。


ところが、うまくいかなかった。


Rさんは、仕事で定期的に関わる方を怒らせてしまったのである。(怒った方の詳細は、控えさせていただきます。)


私が聞いたのは、「怒らせてしまった」という情報だけ。Rさんがなぜ怒らせてしまったのか、わからない。ただ、怒った方に関しては、皆が「難しい」と表現するのは確かだった。


社会教育において、対人トラブルは今後の仕事に響く。怒らせた人の影響力が大きければ大きいほど、その責任は管理職まで問われることもある。


このことが、シン・課長の耳に入った時点からRさんへの制裁が始まった。


Rさんがシン・課長に頭を下げる。


その瞬間、


「Rさんのせいでこんなことになったんだろ!」


シン・課長が怒鳴る。


Rさんは、シン・課長の机の前に立たされて、長時間怒鳴られていた。


シン・課長は私が倒れた時(第2章【倒れた①】参照)よりも、すごい剣幕でまくしたてている。


シン・課長の机は、私たち部下を見渡す位置に配置されている。


シン・課長の机に近い位置に私の机があるので、聞きたくなくても怒鳴り声が聞こえてしまう。立たされ続けるRさんを、見たくなくても見えてしまう。


私は見聞きしているだけだったけど、シン・課長の怒号にものすごくびっくりした。ビクビクしながら、一部始終を見ているしかなかった。


シン・課長は言いたいことを言って、スッキリしただろうか。怒鳴るタイプの上司は1度大きな声を出せば、気が済むだろうし。


ところが、私の予想は外れた。Rさんが怒鳴られたのは、その日だけではなかった。



























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