【勉強だけ『は』できるよね①】

私には公民館の事務所の他に、少しでも長く居たくない場所があった。

学校管理担当の部署、管理課である。


教育委員会のほとんどが、自治体内の学校を管理する『管理課』と私が在籍していた『社会教育課』で構成されている。


社会教育課の事務所は公民館にあるのだが、管理課の事務所は役場庁舎にあった。

社会教育課宛の郵便は総務課と管理課にも届くため、私は毎日管理課にも寄


と「must(マスト)」調な表現をしたのは憂鬱だったからだ。


役場庁舎に郵便を取りに行く外勤を事務所から逃げる手段としていたのだけれども、管理課に行く時だけは足取りが重くなる。


管理課にも副主幹(以下、管理課副主幹)がいる。

この管理課副主幹が発する言葉はどうしても私の自尊心を傷つけるものであった。


基本、目が笑っていない。

話し方はゆっくりとネチネチ系。

声色は低め。


このような風貌の管理課副主幹からの嫌味は大きなダメージを与えていた。

ダメージを受けている間に歯をニッとさせてさらに嫌味を畳み掛けられた日にゃ、ダメージは相当なものだった。


嫌味の内容も巧みで、人の自尊心のウィークポイントをズバリ突くモノばかり。

副主幹がよく私に言っていた言葉は、


「勉強だけ!、できるよね。」

だった。

」!を強調して言うのがポイントらしい。


私は子どもの頃から勉強を積極的にやる方だった。

ただし、運動は大の苦手。体育の成績は5段階評価のうち2だったこともある。

座学、つまり副主幹の言うの方が性に合っていた。


おまけに子どもの頃から人付き合いは苦手。

(子どもの頃の人付き合いの詳細は別の機会で書きたいと思っています。そもそも人付き合いが得意だったらこんな体験談を書いていない。)


小さい町だから、町内の子どもの情報などは簡単に広まる。

そして、管理課副主幹は私が子どもの頃から町役場の職員だった。私に関する上記の情報は既に知っている。


また、私が事務所内でうまく関係を築けていないことも、おそらく副主幹には知られていたのだろう。


副主幹が発する「勉強だけ!、できるよね。」には、


【お前ができるのは勉強だけ】

【他のことは何もできない】

【コミュニケーション能力がない】

【要領が悪い】

【社会に出たら使いものにならない】


そのようなニュアンスを感じずにはいられなかった。


だから、さっと郵便を取りに行って帰りたいのにうまく逃げられずに捕まってしまう。

毎回のように言われる管理課副主幹の言葉は、私の元から低い自尊心をどん底までに下げていった。

































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