【もう1度】

新聞を読んだり、ゴールデンボンバーの曲を聞いたり、働いている時はやりたくてもできなかったことができている。


そのおかげなのか、感情のコントロールもできるようになってきた。

怒りが湧いてきても、壁を殴るなどの乱暴な行動をする前に1拍置く。

これができるようになったことで、自分でも引いてしまうような行動を起こさないでいられるようになった。


感情が穏やかでいるためには、時間と心の余裕と適度な余暇が必要なのかもしれない。


ゴールデンボンバーの『らふぃおら』を聞いてから間もない頃。


朝、目覚めてすぐのこと。

母は私にこう言った。


「今朝の新聞にね、こんなことが書いてあったんだよね。『何事も、人生経験が浅い人は、知らないことが多いのは当然。恥じる必要はない。逆に、経験豊かな人は、若い人を否定せず、見守るべきだ』って。この言葉、心に響くわぁ。」


私も心から同意した。

町役場に入職してからずっと、経験不足や無知を指摘されて、軽蔑されることが多かった。

そんな自分に問題があると思い込んでいた。


さらに、母は続けた。

「本当の大人はね、年下が何かを知らないことを責めたりしないよ。きっと『私もこのくらいの時は知らなかったかも』って考えると思うよ。」


これは私にとって新しい考え方だった。

大人はすぐに非難するものだと思っていたから。


母は最後にこう付け加えた。


「どこにでも批判的な人はいるけれど、間違いや知らないことは誰にでもあるよ。今回のことで思ったけれども、正直、町役場はすぐに責める人が多すぎると思う。経験がない故に間違ったことは、その都度認めて学んでいけばいいんだよ。」


この言葉で、泣きそうになった。1ヶ月前は散々泣いたから、この時ばかりは涙を堪えて「そうだよね!」と元気よく応えた。


間違えること、恥ずかしいことをしてしまうのは生きていれば何回でもある。

それを過度に非難する人は、どこにでもいる。

でも、そんな言葉に耳を貸さずに、自分を正すことが大切なんだ。


母の言葉のおかげで、「もう1度、社会に出てみようかな」と思えたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る