【初めて泣いた日③】

車を適当に走らせて行きついた先は町内の休憩所。

駐車場にトイレが設置してあるだけの場所なんだけども、街を一望できる。


小学生の頃、家族でサイクリングしてここに来たな。

あとは、仲の良かった子とここで撮った写真も残ってる。

子どもの時の思い出スポットだから行きたくなったのかも。


今までは昼間にしか来たことなかったけども、夜に来たのは初めてだ。

小さい街だけども、夜に来たらまぁまぁ見える。


私は子どもの時から夜景好き。

「少しは癒しになるかも」と夜景もどきの風景を見ながら泣いていた。

「滲んでよく見えないや」と思いながら泣き止むまで見続けた。


ここから先も私は職場で泣きたくなる度にこの休憩所に来ることになる。

職場では泣くのを我慢するから休憩所に来た途端に涙が出てきた。

そして、いつも泣きながら夜景もどきを見るのだった。


話を戻して、とりあえず一通りの涙は引っ込んだので家に帰ることにした。


家に帰って最初に出迎えたのは父だった。

普段から肝心なことは話さない父。


明らかに泣いた顔をした私を見て、父は無言で、「なんも言えねぇ」という表情をしていた。


母とはよく喋るので私の顔を見たら事情を話さないわけにはいかなかった。


怒っていたけども、「新卒の社会人は一度は通る道だよ。」と言われて、時間も遅かったのでとにかく休むように促された。


寝られないかと思っていたが、流石に泣き始めてから時間が経っていたため、思ったよりも眠ることができた。


翌朝、まぁまぁ気持ちは切り替えられてるけども出勤するのはものすごく憂鬱だった。


重い足取りで事務所に入り、自分の席に着いた途端。

Bさんから


「神山さん、昨日、情報誌直そうとしたんだって〜?俺そこまでやれなんて言わなかったよねぇ?」


とニヤニヤしながら言われた。


恐らく、就業時間後の出来事をCさんから聞き出したのだろう。

斜め前に座っているCさんはあまり関わりたくないという顔をしていたが。


Cさんから話を聞いたBさんはからかい程度のことに深く真に受けて、情報誌を直そうとした私が滑稽で面白かったのだろう。


何も答えられないでいる私は向かい側の席のEさんを見た。

片側の口角を上げてニヤッとした表情のEさんがこちらを見ていた。






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