【自分軸がなかった就活③】

内定をいただいたのは、各地に病院を展開している法人の事務職だった。


余談だけども、最終面接の時は質問担当のおじ様が着ていた紫色のスーツが珍しくて、「昭和歌謡か演歌の人のようだ」と思いながら質問に答えていた。


紫スーツのおじ様の左隣にはお偉いカンジのおじ様方が数人並んでいた。


おじ様方は私が何か言う度にヘラヘラ笑っていたもんだから不採用だと思っていたのだけど。


だから、内定のお手紙が届いた時はびっくりしたけれども、やっと掴んだ内定は嬉しいものだった。


けれども、なんかモヤモヤする。


面接で紫スーツのおじ様から


「うちの法人は都会の病院に配属されたり、遠くの田舎の病院に転勤させられるてこともあります。転勤には抵抗ないですか?」


と聞かれた。


私は元気よく


「抵抗ありません。どこでも行きます!」


と、いかにも「任せとけ!」と言わんばかりな回答をした。


しかし、内定をもらってから思ったのは


「この私が本当にどこでも行けるのか?」


だった。


子どもの頃からの私が。


数年に1回の頻度で違う土地に移りながら、その場その場に適応できるのか。


正直、自信がなかった。


せっかく内定をいただいた病院にそのまま進むことも決断できずに、民間企業への就活と公務員試験対策を再開することにした。


結果は1社だけ最終面接まで進んだけれども不採用。


公務員試験は目前。

このまま病院の事務職に進むのか、それとも公務員試験を受けるか。

頭を悩ませることとなった。


そして、このタイミングで実家の母からの電話が鳴った。


進路に迷っている旨を話したところ。


「正直、(私の性格では)遠方に転勤しながら勤め続けるのは厳しい気がする」


「地元の町役場の採用試験受けてみたら?」


と返ってきた。


、、、私の進む道が決まった瞬間だった。











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