【2年後②】

「あら、バレちゃいました?」


「『○○郵便局、神山です。』と最初に名乗るんだから、すぐ気づくだろ。」


公民館にいた時と変わらない雰囲気で、私とRさんは会話した。


「元気にやってたか?」とRさんに聞かれたので、「はい、かなり元気です!」と答えた。


数秒の沈黙の後、Rさんからこう切り出した。


「実はな。俺、神山が辞めた次の年度で退職したんだわ。3月いっぱいで辞めたんだ。」


「えっ!」と大きな声が出てしまった。


Rさんにとって、いい環境になることはなかったのか。

私は愕然とした。


Rさんによると、私が辞めた年度の最後にシン・課長の異動が決まったらしい。


そして、代わりに赴任した課長というのが、過去にRさんに対してパワハラを行った課長だった。

この課長とシン・課長補佐がRさんのうつ病と休職のきっかけだったのである。


「もう無理だ!って思った。あの2人とまた同じ場所で仕事をするなら、これはもう辞めるしかないなって思ったんだよね。」


Rさんは嘆いていた。

人事担当者が、Rさんの休職の経緯まで考慮するのは無理だったのかなぁ。


その課長とシン・課長補佐から再びパワハラを受けたのか。

それとも、Rさんがもうこの2人と仕事をすることに拒否反応が出てしまったのか。


どちらかはわからないし、Rさんの気持ちを考えると聞くことはできない。


いずれにしても、Rさんが組織に広がるパワハラで思い詰めたことに変わりはない。

組織ぐるみのパワハラに苦しむ者が生き残るためには、辞めるしかないのだろうか。


私はRさんに、「いやぁ、それはキツすぎますよね。」としか言えなかった。


「ホントに、ひどいものだよ。」

Rさんは力無い声で呟いた。


Rさんは、まだ新しい仕事には就いていないらしい。

だから、「お元気でいてください。」と本心から伝えた。


「おぉ、神山も頑張れよ。」と言って、Rさんは電話を切った。


きっと、あそこは今もこれからも変わらないんだ。


私は憤りの気持ちでいっぱいになった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る