【女性職員の末路①】
公民館の土日祝日は、正職員が1人だけ当番制で日直をすることになっていた。出勤時間はいつもの始業時間から終業時間まで。
公民館内でトラブルがあった時に上司に報告したり、電話対応をしたり。仕事内容は難しいものではなかった。特に何事もなく暇、ではなく、時間が空いている時は気兼ねなく自分の仕事ができる。
誰かの言葉に傷つくことはないし、土日祝日に出勤した分、平日に代休も取れる。私は日直の仕事がけっこう好きだった。
たまに、日直の仕事に就くと図書館の職員から話しかけられる。好ましくない雰囲気を察して、私たちの島から距離を置いている図書館の皆さん。私が日直の時はけっこう話しかけてくる。そして、大きな声では言えない話をしてくれるのだった。
土日祝日限定で図書館パートとして出勤するTさんという女性がいた。Tさんは年配の女性で、穏やかで優しい雰囲気の人だった。そんなTさんからいきなりこう切り出された。
「女性の職員さんは大変でしょう?」
言いたいことは山ほどあったけれども、曖昧な笑顔で応えることしかできない。
すると、Tさんから驚きの話を聞いた。
「私、若い時はこの町の役場の臨時職員だったんだ。当時ね、女性の職員は結婚が決まったら肩たたきに遭ってたんだよね。」
この話は初めて聞いたので、かなり衝撃的だった。女性職員は結婚すると仕事を続けることができず、退職するように迫られるのか。女性職員を説得するのは、総務課の課長らしい。
保健師さんのような専門職の女性であれば、仕事を続けられる。しかし、Tさんがお勤めをしていた頃は、正職員・臨時職員関係なく一般事務職の女性職員はほとんど肩たたきをされたそうだ。
そして、Tさんはこう続けた。
「ひどい話だと、結婚していなくても結婚適齢期に差し掛かった女性に声をかけたこともあったんだよね。」
これには言葉が出なかった。
ちなみに、当時のTさんはというと、「私は声がかかる前に結婚することにした」そうだ。ある意味羨ましい。
最後には、こう言ってくれた。
「今は、肩たたきも少しは減ったとは思うけれども、そういうこともあった職場だと頭に入れておいて欲しくて。いろいろあると思うけれども、頑張ってね。」
Tさんのお心遣いはありがたかったけれども、とんでもないことを知ってしまい、モヤモヤする。
この話を聞いてから1年ほどは、Tさんの言う肩たたきをされた女性はいなかった。そういう風潮はなくなったのかな。なんて思っていた。
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