【書き出したら見えたこと】
精神科やメンタルクリニックに行くことを決断できなかった。
自分が精神の病気になっているかもしれない。
この時はまだ、その可能性を受け入れることができていなかった。
そして、考えることができない状態で、自分の状況を先生に話せる自信がない。
なんで自分がこんな状態になっているのか、完全には理解していなかったのである。
頭の中のテレビのノイズ(第6章【考えることができない】参照)は、相変わらず続いている。
なんで泣いてばかりいるんだろう?
なんでベッドから起き上がれなかったのだろう?
なんで誰とも繋がりたくないんだろう?
なんで何も考えられないんだろう?
なんで職場に行けないんだろう?
ぼんやりする頭の中は、疑問でいっぱいだった。
(本当は答えはわかってたはずなのに。この時は、受け入れたくなかったのかもしれない。)
とりあえず、思いついたことを書いてみようか。
学生の頃からなんでもいいから書き出すことが好きだったので、やってみた。
ちょうど白紙のノートがあったから、それにペンを走らせる。
案外、たくさん書ける。
ノートには、以下のようなことを書いていた。
私が送ってはいけない書類を郵便で送った時に、BさんとAさんが笑っていたのがショックだった。(第2章【郵便】参照)
「勉強だけはできるよね」とばかり言われたのが辛かった。(第2章【「勉強だけ『は』できるよね」参照】)
コミュ障と言われるなんて思わなかった。(第2章【コミュ障】参照)
Rさんと私が仕事を与えてもらえなくて、事務所に取り残された時はものすごく悲しかった。(第2章【仕事をもらえなかった日】参照)
「早く出世することがあったら、議員に言って降格させるから。」と言われて泣きそうになった。(第2章【裏と表】参照)
いきなり怒鳴られて気を失ってびっくりした。ショックで泣いてしまった。(第2章【倒れた】参照)
町民の方から来たメールが堪えた。どっかに行こうとした。(第5章【逃避行しようとした日】参照)
Rさんが怒鳴られて、課長がRさんを「潰してやる」と言った。怖かった。(第5章【「潰してやる」参照】)
自分は頭がおかしくなってしまった。
もう仕事ができないかもしれない。
職場に連絡しなきゃならないし、行かなきゃならないのに行けない。
どうしよう。
私はこの仕事が向いてなかったんじゃないか。
そもそも社会不適合者なんじゃないか。
ノートに書いてから気づいた。
あの職場を初めて客観的に見た気がする。
主観的に嫌な思いをしてきた実感はあるけれども、客観的に見ても「こういう出来事ばかりだったら辛いよね。」と思えた。
それから、やはり自分は明らかに異常な状態になっている。
「社会不適合者」という単語が出てくるとは。
自分でも驚いた。
自分の異常な状態は、あの職場で起きたことが原因で間違いないんだよね。
職場に行けなくなってから、今までの嫌な出来事を思い出せなかった。
だから、自分の異常は職場が原因だと断言できなかった。
しかし、ノートに書き出してみて、はっきりと自覚することができた。
【とにかく、あの場所からは離れた方がいいんだ。】
ようやく、そのことに気付いたのである。
そして、この状況を変えるためには、精神科かメンタルクリニックを受診するべきなんだ。
やっと、受診の決心がついた。
母に、「精神科かメンタルクリニックに行く。」と伝えて、2人でスマホを見ながら病院を探した。
地元にも精神科はあったのだけれども、車で2時間弱の地方都市の病院を検索する。
当時は、今よりも精神疾患に理解がなかった。
ましてや、この田舎では精神疾患への偏見は強いだろう。
ここは、人の一挙手一投足が広まる地域だ。
地元の病院は避けたい。
幸いにも、地方都市の方が当日受診を受け入れている病院が多い。
明日、受診できる。
当日受診ができるメンタルクリニックがすぐに見つかり、そこに行くことに決めた。
母が、事前にメンタルクリニックを受診することは職場に伝えた方がいいかもしれないと提案したので、連絡をお願いした。
この異常な状態が何なのか。
明日、それがわかるのか。
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