【考えることができない】
Zさんからのメールを読んで、「事務所に連絡しないと。」と焦る。
しかし、何を言えばいいのか。
言葉が全く浮かばない。
3日経って気づいた。
物事を考えることができないのである。
この3日間、泣いてばかりで起き上がれなくて職場に行けないこの状況に、「どうしよう」と不安になるだけだった。
何をするべきか、全く考えられていない。
本音を言うと、「職場を辞めたい」方に気持ちは傾いている。
かと言って、辞めるのか辞めないのか、それさえも考えられない。
この時、私の脳内は、テレビのノイズがずっと続いているみたいだった。
幼少期によく見た、アナログテレビのノイズ。
電波が受信できないと、画面一面が灰色のモザイクになって、「ザーーー」という不気味な音がずっと続くあれ。
頭の中が灰色のモザイクに支配されている。
自分が何をしたいとか、何を考えているのかがモザイクに隠れて見えない。
幻聴とはまた違うのだけれども、「ザーーー」という音が、ずっと鳴り響いている感覚だった。
その状態がずっと続くものだから、集中できない。
職場に連絡するために伝える言葉とか、何か結論を出さなきゃならないことがあっても、考えることができない。
考えることができないから、結論を出すこともできないのだ。
しかし、流石に職場に連絡しないとまずいことだけは、頭に浮かんだので、その旨を母に伝えることにした。
「職場に連絡しないままでいるわけにはいかないと思うんだけれども、何を言えばいいか全然考えられないんだよね。」
いい歳した娘がこんなことを親に言うなんて、本当に情けない。
ここ3日の私の様子を見ていて、母も見兼ねたのだろう。
「モンがそう思うなら、連絡したほうがいいとは思う。でも、言えないならお母さんが代わりに言う。何も心配しなくてもいい。」
と言って、すぐに受話器を取る。
母は、この町に生まれてこの町で育った。
町の人のことはだいたい知っている。
町役場の職員にも顔見知りは多い。
だから、シン・課長にも怖気付くことなく話ができる。
電話を終えて、戻ってきた母。
心なしか、少しスッキリした顔をしている。
「とりあえず、モンの今の状態と職場に行ける状態ではないことは話したよ。『職場に行ける状態ではない』ことは、強調して言ったよ。」
つくづく、私はこの母に似なかったのだなと思う。(性格は父に似たのである。)
「本当のこと言うと、お母さんから(職場に)言いたいことはたくさんあったんだよね。(モンが)職場に行けないことしか言えなかったけれども。少しスッキリした。」
昔から強気な母。
気丈な態度で私に接してくれていると思っていたけれども、内心、かなり腹を立てていたようだ。
そして、母はこう言った。
「でも、いつまでもこのままでいるわけにはいかないよね。精神科かメンタルクリニックに診てもらおう。」
私は薄々、そうなるだろうと思いながらもまだ迷いがあった。
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