【久しぶりの面接】

病院の筆記試験が終わり、面接の順番を待つ私。

ものすごく緊張してきた。

面接という形ではあるけれども、家の外の人と話すのが久しぶりだったから。


職場の人たちが怖くなり、人と繋がることも拒絶してから間もない。

そもそも人とまともに話せるのだろうか?


ビクビクしていても、順番は回ってくる。

名前を呼ばれて、ガチガチになりながら入室する。

『入室の作法ってこんな感じだっけ⁉︎』と学生の時に覚えた、『ドアに両手を添えて』などの所作を必死で思い出した。


事務長さんと名乗るおじ様が真ん中に座っていて、他2名のおじ様が両端に座っている。

お偉い感じのおじ様、怖い〜。と脇汗がより滲み出そう。


本当に人と話す自信はなかったのだけれども、何度か面接の経験があるからだろうか、いざやってみると人に聞こえるくらいの声量が出た。


質問内容は、『志望動機は?』など対策済みの質問ばかりだったので、受け答えに詰まることはない。

でも、就活生の時のように、無邪気に自信を持った受け答えはできなかった。


そして、やってきた『退職理由はなんですか?』の質問。


『残業がかなり多い職場で、残業続きだった時に体調を悪くしまして。これはもう無理だと思い、退職することにしました。』


おじ様たちは、『そうですか〜。』と返答したので、心底ホッとした。

あまり深く突っ込まれることはなかったけれども、『今は体調大丈夫ですか?』とだけは聞かれた。

『退職して2ヶ月休んだら元気になりましたので、問題ないです。』と答えて、何事もなく終えた。


採用試験は、私の他に2名の女性が受けていた。

面接が終わった人も待たされて、皆、同じタイミングで病院を後にする。

ただでさえ、人と話すと緊張するので『お疲れ様でした。』と挨拶だけしてそそくさと帰ろうとしたが、1人の若い女性が『あの、2人とも緊張しませんでしたか?』と私たちに声をかけてくれた。


見た目は、私と同年代に見える。

同じような歳の子が今、こうやって仕事を探しているんだ。

私だけではないんだと、正直、ホッとした。


彼女は、『3社受けてるけれども、なかなか決まらなくて。失業保険も期限があるので早く決めたいのですが。』と話し始めた。

3人して『期限が迫るのは焦りますねぇ。』と共感し合う。


ちなみに、町役場の場合は失業保険というものがなかった。

退職金と失業保険の代わりとなる一時金が振り込まれていた。

今までの生活をしていたら、3〜4ヶ月で0になる額だ。


収入がない中で、この一時金が底を尽きることを考えると怖い。

だから、失業保険の期限が迫っているのは焦るだろうと想像できた。


その後は、2人からこれまで応募した企業のお話を教えてもらい、盛り上がる。

採用試験後に、応募者同士で話すこの時間。

けっこう楽しいんだよねぇ。


最後は、若い女性が『お互い、仕事決まるように頑張りましょ!』と言って解散した。


この日は、町役場を退職してから初めて自分の神経に負荷をかけた。

でも、激しく落ち込む出来事もなく、乗り切ることができた。


適応障害が治っているのか、今は外で働ける状態なのか、よくわからないけれどもこの調子であれば大丈夫かもしれない。

1社目の採用試験で少し自信がついた。


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