【「今日、面接です」】

病院での面接から1週間後、結果通知が届いた。

もちろん、不合格。

あれだけ筆記試験に手応えがなかったのだから、当然の結果だろう。


この1週間で、2社目の応募先を見つけていた。

2社目に提出する履歴書を書こうとしていた段階だったので、完成させて即、郵送した。


2社目はチェーン展開している薬局の事務である。

就活を始めた時の希望職種と違い、接客や臨機応変さが必要となる。

求人を探していると、人と会わなくていい仕事はそうそう見つからない。

退職金が底を尽きる恐怖から焦ってしまい、けっこう早い段階で希望職種のストライクゾーンを広げた。


薬局からは2〜3日で連絡が来て、面接に来て欲しいと言われた。


面接当日。

薬局の2階に案内されて、スーツを着た30代くらいのお兄さんと1対1で話すことになった。

この地域のエリア担当者だろうか。

病院の偉いおじ様より威圧感がない。おじ様3人との面接をしたからか、リラックスして話せた。

質問は「前職はどのような仕事をしていましたか?」など対策したものばかりで答えられそう。


そして、ここでも「前職の退職理由はなんですか?」の時間がやってきた。

恐る恐る、「残業が続いて、体調が悪くなりました。」と回答する。


病院のおじ様もそうだったように、薬局のお兄さんもこの退職理由に対しては深くツッコまない。けれども、「今は体調に問題はないですか?」とだけは聞かれた。

なので、私も「大丈夫です!」と自信満々に答える。


回答に詰まることもなく、面接は無事に終了した。


面接から5日程経った頃。

見知らぬ携帯番号から着信がきている。

電話に出ると、薬局のお兄さんだった。

採用でありますように!と思いながら、お兄さんの話を聞く。

結果は、「今の段階で不採用ではないのですが、まだ面接したい方がいるので、その結果を踏まえてから判断させてください。」というものだった。


キープということかな?

チェーン展開している会社では、こういうこともありえそうだけれども、なんだかモヤモヤする。

お兄さんからの結果通知を待てばいいのか。新しい求人を探そうか。

どちらがいいのかしら。

迷った挙句、この日はしばらく待とうと決めた。


しかし、5日待って音を上げた。

やはり、焦る。ソワソワする。


ということで、求人を探す。

すぐに隣町の郵便局の求人が目に入った。

職種は郵便の部署の内務事務。郵便関係の仕事の他にパソコン操作もある。


郵便局であれば、マニュアル化された仕事が多いのではなかろうか?

建物の裏側で働くのだから、人との接点はあれど少ないだろう。

この求人、いいかもしれない。

正規雇用ではないのが気にはなるが、そこは割り切ろう。


しかし、薬局の面接以来、求人を探してなかったせいで募集開始から10日以上過ぎてる。

まだ応募できるのか聞いてみようと、ハローワークに行ってみた。


ハローワークの担当者は、「先方に聞いてみますね。」と郵便局に電話で問い合わせた。


「今、応募してみたいという方が来ていまして、、、あら!そうですか!!今、ご本人に聞いてみますので少々お待ちください。」


保留ボタンを押した担当者が、

「先方は、『今日、面接です。』と言っています。今から用意できるなら、直接履歴書を持参して来てもいいと言っています。行けますか?」と聞いてきた。


なんてこった!


履歴書はこれから書かなければならない。

ハローワークには私服で来ているからスーツも持ってない。

でも、今は朝イチ。

面接は午後から。

急いで履歴書を書けば、自宅でスーツに着替える時間はある。

間に合う。

朝イチに来てよかった〜。


不思議と薬局の結果のことは頭をよぎることはなく、何の迷いもない。


私は『行きます!』と力強く答えていた。。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る