【出張とお土産②】
私が出張に行くことを快く思われていない。
そう気づいたのは、入職してから3回目の出張後だった。
今度は社会教育担当だけではなく、図書館やスポーツ事業の担当職員も集まる研修だった。
どうやら数年に一度の頻度で催されるらしい。
この研修は、児童館の事務所にいる面白い主査Jさんと図書館のベテラン臨時職員(会計年度任用職員)のお2人と一緒に行くことになった。
Jさんと図書館のお2人は普段から優しく接してくれる。
Jさんが「このメンバーいいわぁ」と私の心から思っていた言葉を代わりに言っている。
車内の雰囲気もみんなウキウキといったかんじ。
勉強会と交流会を終えて、4人だけで飲むことに。
Jさんが「女性の皆さんは疲れるだろうから、1件だけでお開きにしようね。」と気遣ってくれたのはありがたすぎる。
過去2回の出張では、課長補佐のはしご酒に付き合わされて寝不足だったもので。
さすが町役場勤続15年のJさん。過去の暴露ネタをたくさん持っている。
暴露された本人は迷惑だろうけども、誰もが知っている内輪ネタだった。
知られすぎて本人も開き直ってるのではなかろうか。
決して人を陥れるわけでもないから大いに笑える。
Jさんも酒の席用のすべらない話として、長年仕込んできた話しぶりだから爆笑してしまう。
入職してから1番笑ったのではないかと思えるくらい、楽しい時間を過ごせた。
研修の帰り道に少しだけ時間が余ったので、寄り道をした。
Jさんと図書館のお2人から「みんなにお土産を買おうよ」と言われたので、4人でお金を出し合ってお土産を買った。
買ったのは、1人1つずつ全員に配れるような個装のお菓子。この程度のモノだったのだけれども、このお土産が災いを招くとは思いもしなかった。
翌日、出勤してから図書館のお2人とお土産を分け合い、「私たちは図書館のみんなに配るから」と言われたので、私は課長はじめ図書館職員以外の全員に個装のお菓子を配った。
すると、そのお土産を見た主査Aさんが向かいの席の主査Bさんに向かって、
「Bさん、たかが1泊の出張でお土産買うんだって!今度俺らが1泊の出張行く時もお土産買わなきゃならないわ!!」
と強気な口調で言った。
すると、Bさんは私をギロリと睨んで、
「1泊の出張でお土産買うって迷惑なんですけど。」
と冷たく言った。
これまでの人生でお土産を渡してこのようなことを言われたことがなかったので、びっくりして固まってしまった。
もちろん、何も答えられなかった。
このお土産は図書館のお2人もお金を出して買ったものなのに。
そう思うと悲しくなった。
でも、それを説明すると図書館の悪者にしてしまう気がしたから言わないでおいた。
もちろん、図書館のお2人にも申し訳ないので、この出来事は伝えなかった。
後からわかったことだが、町役場全体に「1泊の出張でお土産は買うな」という暗黙のルールがあるらしい。
しかし、Jさんや図書館のお2人のようにルールに染まってない人も中にはいる。
このルールの基準は、出張の泊数ではない。
そこにいる人間同士の関係性だったのではなかろうか。
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