【出張とお土産①】
まさか、町役場に入職した翌月に出張に行くとは思ってもいなかった。
5月の初めだった。課長補佐から
「今月末、出張があって俺とあなたで行くことになったから。」
と言われた。
えっ!入職して間もないのに?
そんな早い時期に出張があるの⁉︎
「ビシバシ鍛えるから!」と言った課長補佐(第1章【課長が迎えにこない!②】を参照)と2人で⁉︎
不思議な告知にかなり驚いた。
どうやら社会教育課には年に数回、社会教育を担当している職員の研修があるそうだ。
近隣地域で行う研修から、かなりの広域の自治体職員が1か所に参加する研修もある。
今回は、広域の自治体が集まる研修で車で3時間の場所で実施されるものだった。
出張といっても日帰りか1泊2日なので慣れるとそんなに重荷ではない。
このような研修は、課長補佐が毎回参加していたようだった。そこに相方がいたりいなかったりしていたみたい。
今回も課長補佐が参加することは決まっていたけれども、教育長が私も連れて行くように命じたそうだ。
流石、何を言い出すかわからない教育長。
圧がすごい方だから、私に断る権利はないのだろうな。
(教育長のお人柄は第2章【合いの手②】を参照)
教育長が私を出張に連れて行くように言った理由を考えると、2つ浮かんだ。
1つは、社会教育担当はCさんと私だけども、私はCさんを手伝えるほどの経験がない。
Cさんは手を動かしているところを私は郵便を送りながら見てるだけ。
Cさんは忙しそうだけども、私はやることがない。
だから、私が行くことになったのかもしれない。
もう1つは、私が大学の時に社会教育に関する授業を受けていたからなのかもしれない。
正確にいうと、社会教育主事任用資格を取るための授業。
これらの授業を受けて大学を卒業後、実務経験を積むと社会教育主事という資格をもらえるらしい。
社会教育主事とは、社会教育の専門職員ということだろう。
(参考:文部科学省ホームページ 社会教育主事・社会教育主事補について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/syuji/index.htm)
研修には資格の有無は関係なく参加できるのだけれども、ほとんどの自治体が社会教育主事関係の資格を持っている職員を参加させていた。
当時の社会教育課の中で、社会教育主事関連の資格持っているのは課長補佐と私。
課長補佐は経験が長いし、社会教育主事を取得しているから理解される。
しかし、経験が全くないのに資格がある私のことを面白くなく思う空気に気づいたのは、後になってからだった。
もう少し後で詳しく書きたいと思うが、これまで紹介したパワハラを招いた理由の1つがこれだったのではないか。
大学の時は、子どもの時に参加した社会教育事業を思い出して「なんか面白そう」という理由で授業を受けた。
そんな軽い気持ちで社会教育主事任用資格を取ったのだけれども、内定をもらうために面接でその旨を伝えたことが自分の首を絞めるなんて。
同級生と楽しく授業を受けていた大学時代の私が聞いたら、びっくりして泣くかな。
脱線してしまったので、話を出張の模様に戻すことにする。
出張には、公用車で向かう。
普通は下っ端の私が運転するべきだけども、運転がド下手だと公言していたので、課長補佐が運転してくれた。
あの課長補佐と公用車で2人。ものすごく緊張する。
でも、意外と出張では課長補佐とは他愛もない会話が続く。
研修会場に到着すれば、他の自治体の職員さんと交流できるのが楽しかった。
私と同じ歳か、高卒で入職してるため年下の若い職員が課長補佐クラスのおじさんに付いて来ている自治体もあった。
その光景を見ると「私だけじゃないんだ」とものすごく安心した。
公務員の研修には必ずと言っていいほど交流会という名の飲み会がある。酒が好きな課長補佐に付き合うことになるんだけども、酒が入った課長補佐は愉快になるので嫌な思いはしなかった。
その後も、社会教育の研修には課長補佐と私が参加するように教育長から言われたみたい。
交流会と課長補佐のはしご酒に同行して寝不足になるのは大変だったけど、そこまで憂鬱ではなかった。
研修は嫌な思いをしたり、泣きたくなったりする環境ではなかったから。
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