【歓送迎会】

町役場の飲み会があると、正職員は全員強制参加だった。


入職してから初めての飲み会は歓送迎会。


出席するのは当然だ。歓送迎会の「歓」は私とDくんを歓迎するという意味なのだから。


しかしながら、憂鬱で仕方がない。


大学の時は飲み会が楽しみで仕方なかったのに。


大学の飲み会は同年代ばかりで、酔っ払って好き放題喋っても白い目で見る人はいなかった。


しかし、職場は大学と違う。


年上の人ばかりで立ち居振る舞いがわからない中で好き放題喋っていいわけがない。


ましてや、8時間座りっぱなしでグッタリと疲れてしまう身体で参加する飲み会など楽しいわけがない。


疲れてる時に飲酒すると、だいたい体調が悪くなる体質なので、身体にアルコールを入れたら具合悪くなるのでは?


ネガティブな考えばかり浮かぶ。


出欠表が回ってきたとて正職員には「×」を書くなんてできない。

(会計年度任用職員はお子さんがある主婦の方もいるため欠席できる人もいた。)


渋々「◯」を書いたけれども歓送迎会の日が来なければいいのにと思った。


歓送迎会の「送」は私たちの入職と入れ違いに他課に異動した職員の送別会でこの度、他課に異動したのは2人。


そのうちの1人Gさんは町役場の庁舎に職場が移ったものの、外勤の合間によく公民館に立ち寄っていた。


私が入職してから翌日にGさんは顔を出しに来たので、お互いに自己紹介をした。


町役場の庁舎に郵便を取りに行った時、Gさんに会ったら挨拶をするようにしていた。




歓送迎会において、新卒は1人ひとりにお酌をして回らなければならない。


アルコールを身体に入れるのが不安だった私は自己防衛のためにノンアルコールビールが入ったグラスを持ちながら、お酌に回った。


1人ひとりに「よろしくお願いします。」と声を掛ければいろいろ聞いてきてくれるから意外と会話ができた。


会話をすれば時間を潰せる。


終了時間まであと30分。よし。

Gさんにもお酌しに行こう!


なんて張り切ったのが間違いだった。


「お疲れ様です!」と声をかけてお酌をした瞬間。


Gさんは急に真顔になって


【あのさ、庁舎で会った時は笑顔で話しかけるのやめてね】


と言った。

冷たく、感情が一切ない言い方だった。


今まで生きてきた中で、初対面から間もない人にこのような物言いをされたことがなく、衝撃を受けて言葉を失った。




























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