第7章 再起
【再診】
町役場の総務課から処分の話を聞くまでの1ヶ月間で、私は改善に向かった。
思っていたよりも改善が早かったのだけれども、最初の2週間は適応障害の症状がいくつか残っていた。
退職して職場から離れると、頭の中にあった灰色のモザイクは薄らいだ気がする。
しかし、まだ考えることができない感じがした。
『自分がダメな人間だったからこんなことになった』など、自己否定ばかりしている。
自己否定ばかりしている反動からか、誰かに否定的なことを言われると極端に反応してしまう。
退職後も1度だけ母の小言で壁を殴ってしまった。
母は私を否定するつもりはなかったけれども、私が自分自身を『ダメな人間だ』と考えすぎて、思考が負のループに入ってしまった。だから、ちょっとした一言が大きな刺激になる。
急に腹立たしくなって、感情のコントロールができなくなり、夜寝る前にまた壁を殴ってしまったのである。
流石にこの時は、母に「少し話そう」と呼ばれた。
母に「どうしたの。」と言われたら、泣くつもりなんてなかったのに、「自分がダメな人間だと思って」と泣きながら話していた。
母に「あまり自分を責めなくていいよ。」と言われて話は終わった。
どうしても自己否定をしてしまう心境は、流石に母にも理解できなかったようだ。
そんな状況から改善に向かうきっかけが、退職してから2週間後に訪れた。
それは、メンタルクリニックの再診である。
クリニックの先生に、「調子はどうかな?」と聞かれて、「いろいろと考えた結果、職場を退職しました。」と伝えた。
すると、先生は、「退職しちゃったの⁉︎」と驚いて、少し呆れた表情をしている。
先生は、休職の診断書を書いてくれて、異動も勧めてくれた。
アドバイスを実施せずに、すぐに退職してしまった私に呆れてしまったのかもしれない。
そして、感情のコントロールができなくて壁を殴ってしまった話を先生にした。
いつまでも感情のコントロールができないのが不安という旨も伝えた。
先生の回答は、
「怒りがコントロールできないことは、誰にでもあるから心配いらないよ。」
というものだった。
少し素っ気ない態度だった気がする。
それで、不安になって「本当ですか?」と聞く私に「大丈夫だから!」とイラっとした感じで返答をして、診察は強制で打ち切りになった。
先生の対応に動揺してしまったけれども、この時の私は、再診はだいたい5分以内で終わることを知らなかった。
(拙作を書いている時点で、私はまた調子が悪くなり、このメンタルクリニックとは別の精神科に通院をしている。今の病院でも2回目以降の診察は5分以内で終わる。)
恐らく、クリニックの先生は診察時間が終わりが近づいたので、次の患者さんを呼びたかったのだろうと、今ならわかる。
そして、推測だけれども『職場を退職したなら、あとは時間が経てば改善するだろう。』と考えたのかもしれない。
次回の予約についても、『受診が必要であれば、お電話ください。』と言われたので、尚更そう思える。
実際、受診後に先生の素っ気ない対応によって、『感情のコントロールに関しては、あとはもう自分次第なのかもしれない。』と考えるようになった。
そして、『この先、また社会でやっていけるかどうかも自分次第なのかもしれない。』と考え方が変わってきたのである。
クリニックの先生による予想していなかった対応のお陰で、私はある意味で前向きな考え方に変われた。
突き放されると、『自力で立とう』と思えるのかもしれない。
クリニック受診後の2週間は、元気を取り戻すために動くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます