【仕事『しか』しない】

町役場に入職してから翌月に、人間関係がうまくいかないことを悟った。だから、私はひたすら仕事に励んだ。


そして、気づいたら仕事しない人になっていた。


うちの事務所にいた困ったちゃんな副主幹に仕事を押しつけられた時。(第3章【主担当と副担当】を参照)大変だったけれども、仕事は覚えやすかった。


正直、「これで人間関係の不穏な部分を紛らわすことができる」と考えていた。


そして、副主幹に言われるままに仕事をこなす。必死にやっていたら、休日に女性団体の方から私個人のスマホに電話がくるようになった。


女性団体の事務局だけではなく、他の仕事も似たようなモチベーションで取り組む。そんな日々を送っていたら、仕事から帰宅した後も、休日の時でも頭に仕事のことしか思い浮かばなくなっていた。


家にいても、どこにいても、

「あ、あれやるの忘れてた。」

「明日はあれとあれをやらなくては。」

いつもそんなことばかり考えている。


公民館は役場庁舎と違って、休日でも事務所に顔を出しやすい雰囲気がある。私の家と事務所の距離は近い。

休日にどうしても気になることがあれば、すぐに事務所に行っていた。


課長と課長補佐に注意されないように、自然な感じで事務所に潜り込んで作業をする。一度だけAさんから「神山さん、仕事好きだね。」と言われたなぁ。


Cさんの異動後、抱える仕事が増えると周りのことが気にならなくなった。これを機に私は、「仕事に熱中すれば、人間関係は何とかなる説」を信仰するようになる。


自分の持っているエネルギーを仕事に全集中させた。あの時の私は一体、何の呼吸だったのだろう?


話は変わるが、メンタルや人間関係のことを知りたくて、精神科医の樺沢紫苑かばさわしおん先生が発信する情報をよく見ている。


樺沢先生の著書『ストレスフリー超大全』において、職場の人間関係の輪に入る方法の1つに「自ら警戒を解く」と書かれている。


『あなたが、職場の人間関係を「警戒」の目で観察しているのと同様に、職場の人たちは「新参者」であるあなたを、警戒の目を持って、あなた以上に観察しています。(中略)そこで、あなたができることは、自らが「警戒」や「疑心」を解きながら、「理解」に向けて進むことです。』


また、樺沢先生のX公式アカウントでは、似たような表現のポスト(旧ツイート)が書かれている。


「仕事を覚えるより人間関係を優先しよう。仕事は後からでも大丈夫。」と。


入って間もない職場では、人間関係の構築を優先した方が輪の中に入りやすい。

ただし、「職場の人間関係は深めるな」と樺沢先生は説いている。


事務所内で人間関係の構築は絶望的だった気もするが、人間関係の構築にもう少し取り組んでいれば、どこかで「辛い」と吐露できる人間関係を構築できたのかもしれない。


しかし、当時の私はどうしても付いて回る孤独感から逃れたくて、異常なほど仕事にのめり込んだ。


とうとう、「のめりこみ」は「強迫観念」に変貌していく。


自分が担当するイベントや講座の参加者を増やさなくてはならない。


そんな思いに駆られるようになり、顔見知りの町民に勧誘をしすぎた。


他にも、「ああしなくてはならない」、「こうしなくてはならない」という思考に駆られ、自分の思いを押し付けてしまったことがある。


このような、強迫観念に囚われた行いが、後に自分を追い詰めることになった。

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