第6章 適応障害。そして、退職

【涙が止まらない】

翌朝、起きたらすぐに泣き出した。


昨晩も泣いたのにまだ泣き足りないのか。

涙が止まる気配がない。

そして、起き上がれない。


もう、出勤は無理だ。


いつも嫌なことがあっても、無理やり出勤していた。

しかし、こんなに泣いていたら出勤どころじゃない。

だいたい、起きられないし。


始業時間になっても、私はまだ泣いている。

そして、ベッドから離れられないでいる。

これでは、職場に連絡できないではないか。


いや、できないのではない。

する気力がなくなっているのだ。

連絡しなくてはならないのに、どうしてもスマホに手が伸びない。


事務所から連絡が来るのではないかとビクビクしたけれども、何も来ない。

もしも、スマホが鳴ったとしたら、心臓が飛び出そうになって手が伸びなかっただろう。

今の状態なら、グレーの着信画面を見ただけで涙が吹き出しそうだ。

スマホが鳴らないことに心底ホッとした。


しかし、今度は無断欠勤という非常識行為を人生で初めてやってしまった罪悪感で、「どうしよう。」と不安になっていた。


その時、母が私の様子を見に来た。


私は、「出勤できない。連絡もできてない。どうしよう。」と泣きながら言った。


私の姿を見て、母は「出勤しなさい。」、「連絡しなさい。」とは言えなかったようだ。


「その状態だったら、どうしようもないから。今日は何も考えないで休みなさい。」


とだけ言って去っていった。


その言葉に安心して、さらにボロボロ泣き出した。


昼を過ぎても泣いては止まり、泣いては止まりを繰り返している。


事務所からは、連絡はない。


職場の人たちにとって、私はいなくても良いんだよねぇ。

なんて、考え始めたらまた悲しくなって泣けてきた。


こんなに長い時間泣いたのは初めてだな。

シン・課長から講座のやり直しを指示された件が悔しくて泣いているわけではない。


入職してから嫌なことがたくさんあった。

バケツに水を注ぐように、今まで我慢してきた苦しさや悲しみが溜まっていったのだろう。


Rさんが怒鳴られた段階(第5章【「潰してやる」①・②】)で、私の心はバケツの水が溢れる直前だったのかもしれない。


講座のやり直しは、最後に注がれた1杯だった。

そして、バケツから水が一気に溢れ出たのである。

今の私の頭と心を表現すると、そんな状態だ。


今頃、事務所の人たちは、私が不貞腐れて出勤して来ないと思っているのかなぁ。


今までのことを考えると、今の精神状態を町役場の誰かに話したとて、誰にも伝わらないだろう。

そもそも、この状態じゃ、思っていることを話すことさえできない。


自分の気持ちを誰にも話せないまま、私は世間からと認定されるのかなぁ?


結局、夕方まで泣き続けてベッドから離れられないでいた。


事務所に連絡もできないまま、1日が終わってしまう。

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