【「能力がないんだよ」】
職場に行けなくなる3ヶ月前。
新年度を迎えた。私は入職3年目だ。
この頃は、「新卒は嫌でも丸3年は勤めるべきだ。」が通説で、3年勤められないと転職はできない。たいていの社会人はそう考えていた。
だから私は、あと1年勤めれば転職だってできるかも!
なんて、野望を抱いていた。
そんな私の【野望=野暮な望み】は、ものの見事に打ち砕かれた。
シン・課長補佐が隣の席になったのである。恐らく、誰も隣の席に座りたくなかったんだろうな。新年度初日、恐る恐る席に着いたのを覚えている。
シン・課長は、以下のような印象だ。
基本、目が笑っていない。話し方はゆっくりとネチネチ系。声色は低め。
文字で表すと、管理課副主幹(第2章【勉強だけ「は」できるよね①】参照)と同じ雰囲気を醸し出している。
しかし、目は管理課副主幹より笑ってないし、話し方はもっとネチネチしているし、声もさらに低い。
醸し出す負の雰囲気というのか、そのようなものが、管理課副主幹の上を行っている。どうしてもそんな感じがする。
他の職員は私のことを「神山さん」と呼ぶが、早速、シン・課長補佐は「モンちゃん」と親しげに呼んできた。
女性職員には、ちゃん付けで呼ぶらしく、仲良くやっていければそれでいいかな。と考えた。
しかし、それは甘かった。
新年度2日目以降もシン・課長補佐は親しげに話しかけてくる。そして、5日目で気づいた。親しげすぎるのだ。朝から夕方までずっっっとネチネチとした口調で喋りかけてくる。
仕事に集中できないではないか!
シン・課長補佐は仕事の妨害を得意とするタイプなのか?
そう思った矢先、Rさんから以前、シン・課長補佐と仕事をしていた時の話を聞いた。
どうやら、シン・課長補佐は、突然「待て」と言うなり無理難題な質問を並べて、業務を遅らせることがあったようだ。また、職員を長時間自分の目の前に立たせて説教することもあったとのこと。
Rさんに留まらず、部下の男性全員に行っていたそうだ。
私の考えは合っていたようで、完全なる妨害型だと悟った。
それから、図書館係長を兼務しているシン・課長補佐によって、図書館の正職員Zさんが困っている現場を目撃した。
私が日直をしていた日のこと。
Zさんが朝から「打ち合わせをすると話したのに、シン・課長補佐から連絡が来ないなぁ。」とソワソワしていた。
待っても待ってもシン・課長補佐から連絡が来ない。
Zさんは、同じ事務所で同性の正職員ということで親しくしていた。見ていると、だんだん心配になってくる。
そして、夕方になっても連絡は来ない。痺れを切らしたZさんが、シン・課長補佐に電話した。
第一声は、
「そんなこと言ったか?」
だったらしい。
素で忘れたのか、わざと忘れたフリをしたのかはわからない。けれども、この出来事でなんとなくシン・課長補佐のヒトトナリがわかった気がした。
そして、4月中旬に差し掛かる頃。シン・課長補佐は仕事の妨害レベルのおしゃべりに人格否定の言語を加えるようになった。
1日に1回は「お前はダメ人間だ」と思わせる言葉を使う。
1番堪えたのは、以下の言葉。
「この町の職員は能力がないんだよ。だから、モンちゃんも能力がないんだよ。」
様々な人格否定の言葉を、丸2年言われ続けた。人格否定歴も3年目を迎えると、このような低く見なされる発言に対して過敏に反応するようになるのである。
それ以来、私はシン・課長補佐によって、「お前はダメ人間」だと暗示をかけられていくのであった。
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