【学歴】

日直当番をしていたら、また図書館の職員に話しかけられた。今度は主査である。


図書館の主査は2人いる。2人とも私が日直の時はいつもより優しい。普段は事務所の空気に合わせているのだろう。


1人目の主査Vさんは、お昼ご飯に出前をおごってくれたこともある。今回、私に話しかけたのはもう1人の主査Wさんだった。この方と2人になると、ためになる情報をいろいろと教えてくれる。


この時に教えてくれたことは、経験年数が1~2年の職員にも責任が重い仕事をやらせることが多いこと。


この時はCさんが異動する前だったので、まさか自分が後にそんな目に遭うとは思ってもいなかった。(第2章【生き方②】参照)


話しているうちに、Wさんはこう呟いた。


「自分新卒の時、学歴のことでいじめられたんだよねぇ。」


Wさん、【も】を付けるということはわかっているのですね。


そうなのだ。


入職してから学歴のことで、毎日のように嫌味を言われている。


Wさんの場合は、「自分は大卒なんだけれども。20年前は周りに高卒の上司しかいなくてさ。『大卒は勉強してばかりだから使い物にならない』、『大卒なのにこんなこともわからないのか』とかいろいろ言われた。」のだそうだ。


そして、Wさんはこう続けた。


「私(立)大卒しだいそつは、今だったら全然珍しくないのにね。昔がそうだったんだから、今は国公立大卒の人がいろいろと言われるよね。」


そうなのだ(2回目)。


自慢したいわけではないのだけれども、私が卒業した大学は国立だった。


旧帝大のような難関大学ではなく、地方の国立大である。(ちなみに、全国の国公立大学偏差値ランキングでは下位の方に位置している。)


前章でも書いたが、私は子どもの時から勉強は積極的にやる方だった。しかし、高校入学後は勉強が急に難しくなって成績が思うように伸びない。


それでも、今まで勉強はしてきたのだからと国立大学の受験に挑戦してみたところ、ギリギリのところで合格できた。そのような背景を経て、私は大学を卒業した。


ところが、卒業後に入った町役場には『国公立大卒は罪だ』と言わんばかりに対抗心を燃やす風潮があった。


私が町役場に入職した当時、全職員の最終学歴を割合にすると高卒45%、大卒55%。この位の数値だったと思う。


大卒55%のうち、私立大卒と国公立大卒の職員を割合にすると私立大卒52%、国公立大卒3%。この位の比率だった。


町役場内では、国公立大卒の職員は少数派ということだ。


どうやら、国公立大出身の新卒は私が入職する2~3年位前から採用されるようになったらしい。人数は、片手で数えられる程しかいなかった。


組織の中で風当たりが強いのは、いつも少数派である。


図書館のWさんが言うように、高卒の職員の中には、大卒の職員に敵意を示す上司が一定数いた。


私に「勉強だけできるよね。」と言い続けた管理課副主幹がその1人だ。(第2章【勉強だけ「は」できるよね】①・②参照)


もう1人の高卒上司であるBさんは、大卒職員への対抗意識が顕著だった。職員だけに留まらず、国公立大に入学した者には嫉妬心を抱いていた。


ある国立大の吹奏楽部が、公民館で公演をしに来た日があった。

Eさんと共に「あれができてない」、「これがわかってない」など、初めて会う学生たちの悪口を延々と言い続けていた。


このような高卒上司のターゲットになりたくない私大卒職員の中には、高卒上司の敵意に便乗する者もいる。


私大卒のAさんと初めて話した時に言われた言葉は、「どうせ優秀なんでしょ!?」だった。


語気が強く、「私、話したこともないのに嫌われているのだな」と察した。


Dくんも私大卒で、国立大卒の同期Oくんと一期下の国立大卒の後輩のことを「なんか嫌い」と言っていた。私のことも「なんか嫌い」だったのだろうか。


当時の町役場は、私が入職する前からこのような構図ができていた。国公立大卒の職員は、どこかで誰かから敵意を向けられていた。


私がパワハラを受けることになるのは、入職前から決まっていたのかもしれない。


Wさんと同じように、在職中は『国立大卒は勉強しかしてないから使い物にならない』、『国立大卒なのにこんなこともわからないのか』と言われる日々だった。


卒業した学歴によって初任給が異なるなど、学歴の違いによって生じる影響はある。だから、学歴の違いから嫉妬心が芽生えることはあるのかもしれない。


しかし、学歴という変えようのないものを理由にいじめられる方だって、とてつもなく辛いのだ。


町役場の採用試験を受ける時、このような構図になっているとは全く知らなかった。まさか、社会人になって学歴が自分の首を絞めるなんて思ってもいなかった。


自分は国立大だから、なんでもできて優れているなんて思っていない。


学歴は関係なく、社会に出たら初めはみんな未経験だよ。


経験していないことはわからない、経験しないとわからないことばかりだよ。


知っていることと知らないことは人によって違うよ。


だから、学歴を引き合いに出して人のことをにしようとするのはもう辞めてよ!


私は毎日のように嘆いていた。


嘆きたくなる度に、学生の時から好きだったブルーハーツを聴いて荒れる気持ちを誤魔化していた。


※このエピソードは、筆者の主観で書いたものとご理解いただけると幸いです。

もし、筆者の書いた言葉で不快に思われた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

個々の学歴に違いはあるため、いろいろな意見があるかもしれないと思いながらもこの話を書かせていただきました。

学歴を基準に自分の優劣を判断しないで欲しい。

学歴を他人の人格否定の手段に使わないで欲しい。

そんな筆者の思いを伝えたかったからです。※






































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