【蹴落とす】

職場でも町民からも攻撃を受ける私は、働く目的を失いつつあった。


働く目的を失った町役場職員が行き着く先は、どこなのか。


私が入職する前に、社会教育課から異動したのはGさん(第1章【歓送迎会】参照)とSさんだった。


いつものようにGさんは顔を出しているけれども、たまにSさんの姿が見えることもある。


Sさんは私に挨拶するくらいで、それ以上のことは話さない。一緒に仕事をしていた社会教育課の同僚たちとはよくしゃべる。


あまり嫌なイメージはないSさんだったが、この時だけ驚く言葉を口にした。


「一生懸命働いたって(職員にも町民にも)誰からも褒められないから、職員の誰かをことしかしなくなるんだよ。」


周りは笑いながら共感している。


誰かに承認されたくて、努力して懸命に仕事する。


しかし、いくら頑張っても報われることはない。


だから、一生懸命仕事をするよりも人を蹴落とす道に進む。


この組織では、仕事に励むよりも人を蹴落とす人が生き残る。


私もこの先、ここに行き着くのだろうか?


この時も仕事にのめり込んでいた私は、どうも腑に落ちなかった。






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