第69話
ルドの転移は無事成功。全員無事だし誰も欠けていない。
さて、一体どこに出たのかというと……
「……確かにどこに出るかは分からないとは言ってたけど……」
呆れるように呟いた。
「貴方、わざとじゃないんですか?」
「あ!!文句言わない約束やったやろ!?」
「いや、けどさぁ~……」
「ひどい!!僕頑張ったやん!!」
そんな会話を繰り広げている場所は、まさかの地下牢。ご丁寧に牢の中に出た。
前世でも牢に入ったことないのに、こんな形で入ることになるとは……
思わず溜息が出たが、地下牢という事は城の敷地内にはいるという事。
本来の目的は達成できている。
少々不満は残るが、ルドのおかげだという事には変わりない。
「そうね。ルドありがと」
不貞腐れるルドに感謝を伝えると、とっととこの場から出る為に剣を手にした。鍵をぶち壊そうと狙いを定め、剣を振り上げた所で「うぅぅ……」と私の後ろでうめき声が聞こえた。
「誰!?」
振り返ると、そこには背を丸め冷たい地面に転がる人影があった。
着ている服はボロボロで所々皮膚が露わになっている。随分激しく痛めつけられたことが見ただけで分かる。
まあ、こうして出会ったのも何かの縁。近づき大丈夫か声を掛けようとした所で、その人物の正体が判明した。
「アラン!?」
私の声にその場に全員が驚いたのは言うまでもない。
「どうしたの!?なんで王子である貴方が牢になんて入ってるの!?」
「ちょっ!!ローゼル嬢!!乱暴に扱ってはいけません!!」
息も絶え絶えのアランの体を思いっきりゆすり起こそうとする私をクラウスが慌てて止めた。
すぐにルドに助けてと懇願するが、ルドの顔が険しい。
「どうしたの?」
「…………そいつ多分やけど、呪いにかかっとる」
「え?」
ルドがアランの元に寄り、胸元を開けるとそこには蔦のような模様が身体中に巻き付いていた。
「やっぱり……これは解術は無理や。僕が下手にやると呪いは一気に進行する。万が一うまく解けても精神は壊れるやろうけどね。けど、早く手を打たんとこいつの命がないわ。ちゅう訳でこいつはどのみち助からん」
ルドは冷たく突き放した。
更に続けると、この呪いをかけるように命令したのは父である国王だと言う。
アランが国王にとって害になったり不要な者だとされた場合に発動されるよう、生まれた時にはすでに掛けられいた。今までは従順だったアランだったが、私と出会ったことで変わったってしまった。結果それが発動に至ったらしい。
「まあ、仮定やけどね。間違いないと思うわ」
「なんてこと……」
私と会わなかったらアランはきっと、こんなに苦しむことにならなかった。その事実に胸が痛い。
それと同時に自分の息子にこんな酷い仕打ちをする国王が許せない。
「あの王なら自分の子でも容赦せず切り捨てるでしょうね」
エミールが同調するように口を挟んできたが、今は国王の事で言い争ってる場合ではない。
ルドに何とかならないか縋るが、首を横に振るだけ。
「ローゼル嬢。辛いでしょうが、仕方ないんです。いくら
「……そうですね。
クラウスとエミールが私を宥めるように言っているのだろうけど、どうにも嫌味っぽい言い方にルドがプルプルと体を震わせている。
「……あんたら、それ、僕に言ってるんか?」
「まさか!!そんな訳ありませんよ。ただ、
「私も同感ですね。そんなの負け犬と同じですから」
明らかにルドを煽る二人。
「ああああ、そうかい!!そこまで言うんやったらやったるわ!!あんたらよう見とき!!」
その煽りにのるルドもルドだ……
まあ、経緯はどうあれ結果がよければすべてよし。
クラウスとエミールは私の方を見ながら微笑んでいた。
今回はこの二人に助けられた。仮一つ、と言う所だろうか。
「……ルド、大丈夫?」
「大丈夫や。あの二人に目にもん見せたるわ」
そういうルドだが、顔には疲れの色が見える。
それもそのはずだろう。イルダとの戦闘があり、休む間もなくここまでの転移だ。これで疲労していないと言う方がおかしい。
フーと深く息を吐くとルドの眼の色が変わった。
それと同時にアランの体全体を覆うほど大きな魔法陣が浮かび上がり、呪いで出来た蔦を少しずつ巻き上げて行った。
私とクラウス、エミールは息を飲むように黙ってその様子を見ていた。
ルドは額に汗をかきながら必死に頑張ってくれているが、顔色が良くない。
心配しながら見ていたが、ルドの体がフラッと倒れ込むのが見え「ルドッ!!!」と傍へ駆け寄った。
「ルド!!大丈夫!?」
「ああ、あんまし大丈夫ちゃうがな……やれるだけの事はしたつもりやけど、やっぱ全部の解術は無理や」
「ええ、十分よ。ありがとうルド」
アランは先ほどよりは大分呼吸も落ち着いているし、これ以上はルドの負担になってしまうと思った私はルドに休むよう伝えた。
ルドは「後は頼むわ……」と一言言うと、黒豹の姿になりそのまま眠りについた。
感謝と労いの意を込めて、ギュッと力強く腕に抱きしめた。
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