第4話

遂にやってまいりました。救出作戦決行の日。


そんな朝ぐらいのんびり優雅に過ごしたかったのに……

日が昇って間もない頃にアルフレードが屋敷にやって来たもんだから、私はエルスに叩き起されテンションだだ下がりの中、朝食を摂っている所です。


「どうせ無事に助け出せるのは分かりきってんだから、もう少しゆっくり寝かせてくれんかね!?どんだけ血に飢えてるんよ!!」


──……なんて事は言えるはずもない私は、目の前でお茶を飲んでいる男を睨みつけるのが精一杯だった。


今回の計画はこうだ──……

私がエルスと一緒に街へ行ったはいいが、人混みに紛れてしまいエルスとはぐれてしまった。

困った私は、エルスを探して街を彷徨っていつの間にか路地裏へ。

すると見知らぬ男達が声をかけてくる。私は疑うことをせずその男達の後をついて行くと、人気のない所で攫われる。──と言うシナリオらしい。


アルフレードは気づかれないように私の後を追って来る。


(これぐらい私一人でも十分なのに)


私が令嬢達を助けちゃうと竜騎士の面子に関わるから?

私からしたら、そんなものどうでもいい。


食後のお茶を飲みながらそんな事を考えていると、早速アルフレードの嫌味が始まった。


「令嬢と言うのは、こんなにものんびりしているものなのか?」

「えぇ。淑女たるもの慌てず落ち着いて行動しなければなりません。それは衣食住全てに当てはまります。アルフレード様はそんなに急進的ですと余裕が無い様に見えますわよ?」


微笑みながら言うと、アルフレードの雰囲気が変わった。


「ほお?私が余裕が無い様に見えると?それは面白いことを言われる。これでも私は長年竜騎士団の団長として務めをはたしているんだが?」


ギロッと睨みつけられ思わずゾクッと背中に悪寒が走った。


(しまった。言い過ぎたか……)


しかし、言ってしまったものは今更取り返しがつかない。


すっかり冷えきったこの空気を元に戻すことも出来ず、出発の時間が来てしまった。



◇◇◇



「──全く、お嬢様の言動には毎度ハラハラさせられますよ。勘弁してください」


そう愚痴を言っているのはエルス。


「仕方ないじゃない、あの男ムカつくんだもん」


串焼きを口にしながらエルスに言い返す。

今、私達は買い食いをしながら街を探索する令嬢を装っている。

数メートル離れたところにはしっかりアルフレードが付いて来ている。


そして、アルフレードとは別に私達の後を付いてくる者も。


「──……3人……いや、4人ですかね?」


「そうね。目立つ格好してきて正解だったわね」


今日の私は普段の装いとは訳が違う。

いつも街に来る時には動きやすい様にシンプルな服装で来るが、今回は見るからに成金のお嬢様。ギラッギラしておりますよ。


正直、この格好で来るのは抵抗があったのだが、餌が良くないと獲物も釣れないとエルスに説得され渋々やって来たのだ。


(じゃあ、サクッと終わらせますか)


串焼きを食べ終わったのが合図に私達は行動に移す為、わざと人混みに紛れた。


「いいですか、お嬢様。ご令嬢達が捕らわれている場所を特定しても、に手も足も頭も出してはいけませんよ。忍耐です」

「……分かってるわよ」


どれだけ辛抱がないと思われているんだ私は……


「では、ご武運を祈っております」


その言葉を残しエルスは私から離れ人混みに消えて行った。

私は計画通りエルスを探すふりをしながら路地裏へ。

すると、すぐに男達が私を取り囲んだ。


「お嬢さん、迷子ですかい?俺らがお連れの所まで連れて行って差し上げますよ」


ニヤニヤしているのが気持ち悪い。


相手はやはり4人。身なりは割としっかりしている。

令嬢達に警戒心を持たせない為だろう。

まあ、小汚い格好の奴には誰も付いて行きたくないからな。


「まあ、ご親切にありがとうございます。お願いできます?」


微笑みながら返すと、男達は互いに顔を見合せニヤニヤしながら私の手を取ろうとしてきたが、その手が気持ち悪くて反射的に叩き落としてしまった。


「す、すみません。貴方の手に虫が止まっていたもので……」


なんて汐らしく言えば、怪しまれる事は無かった。


まあ、後ろからアルフレードの「我慢しろ」と言う強い視線を感じていたが、そんなものは知らん。条件反射だ。


こうして、私は計画通り大人しく男達に連れられて街外れまでやって来た。


「……あの、こちらで本当にあっているのですか?なんか人気が……」


そろそろだな。と思い話しかけると、案の定男達が私を拘束し縄で縛りあげた。


「キャーーーー!!!何をするんですか!?イヤ!!離して!!」


(ん~、流石私。主演女優ものの演技力)


「へへへへ!!残念だが、お前はもうこの国には戻れねぇよ」

「何ですって!?」


(やっぱり、隣国が絡んでいるか)


そんな事を呑気に考えていたら、頭から麻袋を被せられ男に担ぎあげられ、何処かへと運ばれて行った。

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