《コミカライズ連載中》転生した女マフィアは異世界で平凡に暮らしたい~暗殺者一家の伯爵令嬢ですが、天使と悪魔な団長がつきまとってきます~
甘寧
ガドル王国
第1話 プロローグ
「貴方の事が頭から離れないんです。──……責任取ってくれますよね?」
「ローゼル。私の手を取るよな?あんな事をしておいて取らないとは言わせない」
私の目の前には目麗しい男が跪き、双方愛の告白と言う名の脅しを口にしていた……
(マジで勘弁してくれ……)
◇◇◇
──ここは、ガドル王国。
実は今この国ではある事件が勃発している。
その事件とは貴族令嬢が次々に誘拐され、未だに犯人が特定出来ないでいるのだ。
大方、隣国のスミリア王国の奴らの仕業だろうと踏んではいるが、それは仮説に過ぎない。
決定的証拠がない限り、こちらも動けないのだ。
スミリア王国の現国王は野心家であり戦闘狂。
隣国の国に喧嘩を吹っかけては戦争を起こし、国を乗っ取って行く。
そして、今狙われているのはこの国ガドル王国だ。
この国には鉱山があり、スミリアだけではなく数多の国に狙われている。
さて、何故私がそこまで知っているのかと申しますと、こう見えて私も令嬢だからです。
私はローゼル・シェリング。父はヘルマン・シェリング。ここ伯爵家の当主だ。
そして、我が家はちょっと特殊な仕事を生業にしている。
そこ仕事とは……──
「……父様、そんな所に置いておいて置いたらカーペットが汚れてしまいますわよ?」
父様の執務室へ出向くと執務室は血塗れで、足元には血だらけで息絶えた者が二人。それは使用人の格好をしていた。
父様は何事も無かったように剣に付いた血を振り落とし、返り血を浴び真っ赤に染まった顔でこちらを向きニッコリと笑っている。
「あぁ、ローゼル。すまないね。今片付けるからちょっと待っていてくれるかい?」
知らない人が見たら発狂案件だが、私にとってはこれが日常。
それはこの屋敷に住む使用人達も同じ事で、皆驚きもせずいつもの様に部屋の片付けを始めた。
父様が着替えを済まして戻って来る前には部屋は綺麗に片付けられた。
このシェリング家に出仕する者は皆、腕の立つ者ばかりだ。
でなければ、命の保障はない。
(毎度思うが、本当ここの使用人達には感服するよ)
「──まったく。使用人に紛れて私の命を狙おうなど千年早いな」
父様はソファーに座るなり、先程の剣を磨き始めた。
私はその様子を大人しくお茶を飲みながら見ていた。
「さて、邪魔が入ったが本題へ移ろうか」
父様の顔つきが変わったことが分かった。
この顔をする時は、仕事の合図。
「ローゼルも知っての通り、令嬢誘拐事件が後を絶たない。むしろ酷くなっている」
ふむ。遂にうちに話が来たか……
「賢いお前なら、私の言いたいことが分かるだろ?」
「えぇ。父様」
(私が囮になれという事か)
シェリング伯爵家は表向きは商人を生業にしているが、本当の家業は暗殺兼諜報。
この事を知っているのは一部の貴族と陛下だけ。
まあ、そうは言っても噂というものは誰の耳にでも入るもの。口には出さないが、殆ど周知の事実だと言っていいだろう。
勘違いしないで欲しいが、低俗の奴らの様に好き勝手殺すような事はしない。
私達は悪事を働いている者だけを殺る。
その中でもちゃんと見極めて、尋問したい奴は殺さず連れ帰るし、いくら殺したくても国王が生かせと言えばギリギリ生かして連れ帰る。
(だから王家公認を頂けているわけなんだけどね)
この国を落とせないのは
そんな事をしているから、敵ばかりが増え父様の命を狙う輩は昼夜問わずにやってくる。
それは、娘の私も例外ではない。
幼い頃から命を狙われ続けた結果、今や立派な暗殺者になった。
それとは別に私には父様や母様、それに使用人達にも内緒にしていることがある。
それは……前世の記憶を持っている事。
生まれ変わる前の私は、とある国のマフィアの一員だった。
コードネームは「クロウ」死神と言う意味合い。
親もなく、身寄りもなかった私は物心ついた時から盗みや詐欺。ある時は人を殺してまで金品を奪い、その日その日を必死に生きていた。
そんな私に手を差し伸べてくれたのが、所属することになるマフィアのボスだった。
歳は50半ばぐらいのイカついおっさんだったが、私の事を本当の娘のように可愛がってくれた。
そして、そこで色々なことを学んだ。
身の守り方、ナイフや銃、毒の使い方、ターゲットを一撃で仕留める方法、怪我をした際の応急処置、更には料理や裁縫まで様々だ。
そして、明日はボスの生誕祭が行われると聞き、プレゼントにタイピンを用意し「ボスが喜んでくれるといいなぁ」そう思いながら眠りについた。……が、目を覚ましたら何故か赤子だった。
その時の絶望感、無念感は半端ではなかった。
何故このような事になったのか、元の私はどうなったのか、もうボスやみんなに会えないのかと……
しかし、悲しんでいる暇はなかった。
最初に命を狙われたのは生後三日目の事だった。
夜中、みんなが寝静まった頃合いをみて黒装束の男が躊躇なく私の首目掛けてナイフを突き立ててきたもんだから、小さい体を駆使して避けに避けまくった。
赤子では武器を手にすることはおろか、手も足も出せやしない。
持って生まれた反射神経がなきゃ確実に死んでた。
生後三日目でこの世を去るところだった。
そうこうしているうちに、父様が駆けつけてきて刺客は瞬殺。
私は無事に生き延びられたって訳だが、この選択が間違っていたことにすぐさま気づかされた。
「流石は私の娘だ!!生後三日目にしてこの反射神経!!これは立派な暗殺者になれるぞ!!」
この世に生を受けて二度目の絶望を感じた瞬間だった。
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