35話 ロビーにサクラザキさん到着

「どうしたんですか?」


受話器を置いた山本さんに、俺は尋ねると

「サクラザキ先生が受付に来られたようで、、、」と振り返り答えた。



「ああ。」

そーいえば、そういう約束だったな。

目の前の仕事に必死すぎて忘れていた。



「今、『少し約束の時間より早く来てしまったのですが、お時間大丈夫ですか?』とメールを頂いて、、、」

なるほど。さっきのメールはそれか。


「これからお連れしても、虹乃先生は大丈夫そうですか?」





「なんでも、30分くらい前から受付のロビーで待っていたみたいです」


山本さんのこ言葉に驚いた。

「30分も?!」



「はい。ロビーの椅子に30分くらい座っている女性がいると受付のスタッフが言っていました....。恐らくその方なんじゃないかと...。」

そんな早く着いていたなら声を掛けてくれれば良かったのに。

「多分、先生の仕事の邪魔になると思って気を遣われていたんだと思いますよ?サクラザキ先生はとてもお優しい方ですので。」

そっか。

「それで、虹乃先生、どうされますか?」

山本さんは机の上に広がる色紙の数と残りを見て言った。


「まだお仕事残ってますので、もう少しお待ち頂きますか?

それなら、一旦別室にお通ししておきますが....。」


「いえ。すぐ呼んでもらって大丈夫です。

サインを描くだけなんで目を瞑ってでもできます。」

「そうですか?」

俺は頷くと、

「じゃ、虹乃先生が良いとおっしゃるのなら...。私、受付にサクラザキ先生を迎えに行ってきますね。」とやや張り切り気味な返答が返ってきた。



「はい。お願いします。」

「はいっ!行ってまいりますっ!」

何故かビシッと敬礼をして張り切って出ていった。


俺は、足早に消えていった山本さんの背中を何気ない軽い気持ちで、見送った。


PS.





『西野君?!』

『お嬢様?!』

こうなる未来も知らず、心穏やかに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る