2話 西野奏汰は猫(美少女)を拾う

「猫拾った?マジ? なんで?? 捨て猫?」

頭の中を疑問符だらけにしながら、雄大が質問攻めをしてくる。


「いや、多分、迷子だと思う。首輪してたし....」

完全に捨て、られては、ないよな。まだ。多分。

あの人の境遇を少し混ぜながら作る適当な嘘が次々とストーリーを生んでいく。

作家やっててよかった。

「子猫?親猫?」

とことん聞き出さないと気が済まないらしい。

「あー、人間で言えば俺らくらいの年齢っぽい。」

人で言う16、17歳は猫で言えば1年ちょっとってとこだった気がする。

「じゃ、まだ子猫じゃん!迷子の子猫かー。なんで?また律儀に拾ったんだ?奏汰、そんな猫好きだったっけ?」

野良猫とか捨て猫みても置き去りにする選択肢もあるくね?

雄大の、不思議さと、疑心暗鬼が混ざったような顔は、俺に動物大好き!っていうイメージ無いけど? とでも言いたそうだ。



「別に、動物嫌いではない。ただ、家で飼うのは好きじゃないってだけだ。」

「理由は?」

「毛があるから。」

即答する。

「毛!? 嫌いな理由そこ?!」

「ああ。床とか服に毛が付くし、汚れる」

だから猫に限らず、犬とかハムスター、インコとかも無理だ。

別に、抜け毛さえ酷く無ければ、飼ってもいいと思うけど。実際、猫とか、かわいいし。

「ふーん。けど、好きでもないなら、なんで猫なんか拾ったんだよ」

当然くるこの質問に俺は頭を悩ます。

「えっと....そう、雨の中、道で震えてたんだ....。」

流石にこの設定は無理があるか?

そっと様子を窺うと、なぜか意味深に頷かれた。




「奏汰が雨の中、震えた迷子の猫を拾う‥ねぇ....。」

「あの奏汰がねぇ....。」

ぼそぼそと呟きうんうんと頷いている。

なんだか不気味だ。


かと思ったらパッと顔を上げて目を合わせてきた。

「けど、嫌いだったら、普通、拾わなくね? 」

いくら、ずぶ濡れで震えてる子猫を見つけても、無視して通り過ぎるが、セオリーだろ。

「そんなセオリー知らない。困っていたら助ける、それだけだろ。」

「くはっ。相変わらず、奏汰って、人情深いのか、冷酷なのかわかんねぇな」

昔から全然変わんねー。

当たり前の事を言ったつもりが、笑われた。




「まぁ、そういう事だから、俺、放課後は、パスで」

「へいへい。了解。雨の中拾ったんだったなら、その猫、風邪ひかないように2,3日はちゃんと面倒見ろよ?」

ちょうど明日から土日で休みだしさ。

その後は、飼い主探すか、警察届けるか、最悪、可哀想だけど、保健所に連れて行くとかさ。

「言われなくても分かってる」

「ま、そういう話は、奏汰のほうが詳しいか....」



きっと昔の俺を思い出しているのだろう。もう踏ん切りはついているのだから同情はやめてくれ。ただ、岡野雄大とはそういう男だ。リーダーシップもあって、人あたりもいい。とても優しい男なのだと俺は心の中でふっと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る