66話 脅迫?
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「落ち着いたか?」
俺はすすり泣く彼女が落ち着いたころに声をかけた。
「す、すみません。お見苦しいところをお見せしました。」
彼女は手元にあった箱ティッシュをとると目元をふき、目と鼻先を赤くしながら謝った。
「いや、まぁ、人間、誰だって、どうしようもなく、泣きたいときはあるからな。」
謝ることじゃない。
慰めの言葉をかけるが、櫻崎さんはとても恥ずかしそうに俯いたままだ。
「....。」
「それより、どうして櫻崎さんが泣くほど何に追い込まれいたのかを聞かせてくれると嬉しい。」
何か力になれるかもしれないからな。
この言葉で櫻崎さんの顔が少し上がった。
俺は、彼女の目を見て聴いた。
少し目を反らした彼女は、一瞬押し黙り、そして、上目遣いに聞いてきた。
「...。げ、幻滅、しませんか?」
パーカーの帽子を深くかぶり、少しだけ顔を出した。
「何に?」
「えっと、たぶん、西野君が知っている、櫻崎絃葉じゃないと、ガッカリさせてしまうかもしれません。」
「そ、その、皆さんが、私の事を、て、天使とか、お、お嬢様とかと呼び、あらぬイメージ像で私の事を見ているのを知っています....。私が、こんなくだらない事でウジウジする人間なんだと知れば、落胆させてしまうかも、しれない、です...。」
別に、私は自らそのようなイメージをもたれようとしたわけではありませんが。
最後にそう付け加え、櫻崎さんは悲しそうな顔で笑った。
どうやら、俺が、櫻崎さんを理想上の虚像人物と言う目で見ていると思っているらしい。
まぁ、櫻崎さんが天使で、お嬢様だと信じて信仰する奴らなら今の櫻崎さんをみると、事実と想像のギャップで、何かが失われていくのかもしれないが、
あいにく、俺はそんな宗教の洗脳は受けてない。
だから、俺は、心の奥底で悲鳴をあげて助けを欲している彼女の瞳を見つめて言ってやった。
「悪いが、今まで、櫻崎さんをそんな目で見た事はないし、櫻崎絃葉を俺はそんなに知らない。事実、席替えで隣の席になって、顔を合わせるまで、名前と顔が一致していなかったくらいだ。そんな幻滅するほど、櫻崎さんの容姿に惚れていないし、信仰心を抱いてもいない。むしろ、ここで、引き下がれば、『櫻崎さんは、必要以上に人を恐れ、誰にも相談できない哀れな女』という人物像が俺の中で固定概念として出来上がってしまうのだが、それでもいいか?」
自分で切り出しておいてなんだが、なんだか、脅迫みたいになってきた。
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