5話 櫻崎さんは美少女らしい

「てか、普通に考えて興行収入12億ってすごくね?」

「そーか?ラノベ原作の劇場版とかだと平気で32億行ったりするし、それに、漫画原作の映画とかだと普通に200億行ったりするらしい。」

「200億?エグ。」

上には上がいるんだな。



「それに、興行収入ってだけで、実際、原作者に入る原作使用料は固定だからだいたい50万ちょっとしか入らないし。」



「50万....俺的には十分すぎるけどなー」

「全然足りない。」

「その400倍だっけ?」

叔父さんとの約束。

「ああ。ほんと、クソみたいな話だよな。」

俺は胸糞悪さを吐き捨てるように言った。

「....だな....。」

雄大も静かに頷いていた。



「けど、身バレのリスクは極力低いほうがいいから。変に俺の名前出すなよ。頼むから。」

「はいはい。先生。」

!」

「くくっ」

俺の事を先生と呼ぶのはからかっている証拠だ。

案の定、睨むと面白そうに声を押し殺して笑っていた。



ひとしきり、俺を弄び気が済んだのか話が櫻崎さんの話題に戻った。

「けど、櫻崎さんって、マジのお嬢様らしいぞ。」

あの優雅な佇まいに、庶民の暮らしを知らなさそうな純粋な瞳。

可愛い。癒しでしかないよな。

「....らしいな。」

俺は頷く。

「お、それは知ってる?」

「……最近学んだ。」

ちなみにどこで勉強したかは、、秘密だ。

「へぇー。珍しい。」

「この学校に居れば、否が応でも耳に入ってくる。」



「ま、確かに。正直言って、桁違いだもんな。家柄がさ。だってあの櫻崎家だぜ?櫻崎さんの叔父さんは現総理大臣の秘書らしいし。お爺さんは病院の医院長、父親も医者で日本医学研究所の研究員。しかもノーベル医学賞にノミネートされた事もある偉人。母親はあの世界的有名なデザイナー『nanako』。これだけエリートが揃っていれば、そりゃ、櫻崎さんみたいな天使が生まれるよなって話だわ。納得。」

神様って、偉大だ。すげーわ。



雄大は、そう感嘆をあげているが、俺には、本当に生きづらい家族の元に生まれてしまったんだなと、櫻崎さんの心境が少し分かった気がした。


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