4話 人の名前が覚えられないのは病気かもしれない
けど、雄大は大げさに溜息をついてくる。
「はぁ。ったく、小説とかでもさ、主人公からモブキャラまで、結構な人物が出てくるだろ?生み出すのもそうだし、キャラ全部把握しとかないとだろ?それはどーなんだよ。」
特に、奏汰は色々なシリーズ出してるからその分キャラクターの書き分けとかしてるんだろー?
「リアルと小説は別だ。俺の物語の登場人物はすべて把握できてる。モブキャラの裏設定も含めてな。」
話に描いてないモブの母親の名前まで言えるぞ。
「なに、そのリアルで使えないチートスキル」
雄大が空を、いや、教室の天井を仰いだ。
「うるさいな。ラノベ界では役立っているんだから立派な能力だろ。」
「はぁ。なんか、奏汰、裏ではリア充並みに充実してんのに、肝心の高校生活は青春の『せ』の字も見えてこないなー。もったいない。」
「勝手に言ってろ。この学校で、俺は必要最低限の人付き合いしか求めてないから。」
正論を言ったつもりだったのだが、雄大は頭を抱え、憐みの視線を送ってきた。
本当に、感情の浮き沈みが忙しい奴だ。
「はぁ。奏汰の事は昔から知ってるけどさ、マジで、奏汰、そんな思考回路でよく人気作家の座を手に出来たよな...。」
逆に感心する。
嫌味と言う名の感想を俺は皮肉で返す。
「文章能力と対人スキルは比例しないからな。」
嫌味たらしく言ってやると、鼻で笑われた。
「同感。」
「ったく。
あんなに清楚で可憐な
そう、俺のもう一つの名を口にした。
「おい雄大。学校でその名前出すなよ。身バレするだろ。」
俺は雄大を制した。
「大丈夫だって。誰も、奏汰があの有名ラノベの『俺バレ』とか『死に恋』の作者、『
神経を逆立てる俺にヒラヒラと手のひらを反す雄大。
「成績だけが取り柄の万年ボッチ。そんな陰キャ男子が、実は、発売月だけで、電子書籍も合わせて、7.8万部を優に超え、発売日の各書店、購入ラノベチャートを席巻し、アニメ化は既に決定しているものも含めて3本。アニメ含む虹乃彼方の累計興行収入は12億円。デビューして2年で既にラノベ界の重鎮、超人気ラノベ作家。現在手掛けてるシリーズだけでも2,3作品。ほぼ毎月どこかの出版社で目にするペンネーム『虹乃彼方』。その『虹乃彼方』本人が実は、この高校に通っている彼なんです。とか、仮に校内中に言いふらしてもデマだと言って信じてもらえないから。断言できる。うんうん。」
熱弁してディスられる。
いや、そんな腕組みして頷かれても…。
その顔、少しだけ、腹が立つな。
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