12話 なぜ、熱がある事を隠すのか?

「いい。お前の大丈夫は信用できない。」

「ぅ...」

「櫻崎さんの大丈夫で俺は散々痛い目を見てきた。」



「あぅ...」

「この数カ月で、俺は、櫻崎さんの『大丈夫です』を信用してはいけないと学んだんだ。」

「あうぅ......」


俺の1言1言に、ダメージをくらい、どんどん萎れていく。ちょっと面白いなと思ったが、今は、心を鬼にする時だ。





「俺も男だから。確なる上は、、、、、力尽くで奪うのみ!」

彼女がダメージを受けて沈んでいる隙をついて、俺は、彼女が持っていた体温計を奪う。


「あ!! ちょ、ちょっ....! 西野君っ!!!」

「体温計、ゲット、」

驚く顔が面白くて、つい口元が緩む。

「い、いきなりはズルいです!!」

彼女はソファーの上でしゅんと縮こまった。

「悪いな....。こうでもしないと、見せてくれないだろう?だ、か、ら?.....は??」


俺は彼女から奪い取っった体温計に表示された体温を見て目を疑った。




「37.8度....」

よくもまぁ、平然と椅子に座ってゴネれるものだ。


俺だったらベッドから起き上がる事さえキツイのに。




「櫻崎さん、」

「な、なんでしょう....?」

この状況でまだしらを切るつもりのようだ。

はぁ。

なんでそんなに隠したがる。


まだ結構、熱、高いじゃないか。


「これ、この数字見えるか?」

体温計から櫻崎さんへと視線をずらすと、また、目をそらされた。


「.....。」

ソファーの上に体育座りで、むぅ〜っと頬を膨らませ、むくれている。

怒りたいのは俺の方なんだが?





「だから、見せたくなかったんです....」

怒られると思ったから。

「はぁ.....。どうして、君は、いつもいつも、元気になったと嘘をつく....。ついこの間もこのやり取りをしたばかりな気がするが?」


「....そ、そんなに、ため息をつかなくてもいいじゃないですか。」





「....。それをそのまま君に返すよ。『そんな意固地になって、元気なフリしなくてもいいじゃないか。』とな」




「あぅ....。き、昨日に比べたら全然下がりました.....。元気になったと感じているのも本当です....。嘘じゃないです」



「まぁ、確かに、高熱でぶっ倒れた時よりは楽になっただろうさ。けどな?」

櫻崎さんは、頬を真っ赤にしてむくれている。やはり、まだ怠さはあるのだろう。口先では文句を言っているが、目がとろんとしていて、いつもの覇気が無い。



無理をしているのは一目瞭然だ。

風邪引いたなら大人しく寝ておけば良いものを....。何と張り合ってるんだか.....。


「何度も言うが、元気の基準を40度近い高熱でうなされていた時に持ってこようとするなよ。人間の平均体温計は36.5℃前後なんだ。覚えておけ」

常識だ。

俺はなぜ、女子の学年トップの成績を持つ彼女に説教をしているんだ。




「でも....」

まだゴネようとする櫻崎さんに俺は念を押す。

?」


「....はい....」

彼女が何か言いかけたが、俺の押し切りに負け、小さく頷いた。

彼女は人間だけれども、しょぼくれたケモミミと尻尾が見えた気がした。



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