51話 電話

電話の着信音。

見ると、山本さんからだった。


「悪い、仕事の電話だ。先、教室戻っていてくれ。」

予鈴が鳴るまでには戻る。

「りょーかい。次、移動教室だったから遅れんなよ!」

「ああ。」


俺が促すと、雄大は完食済みの弁当箱を弁当包みへ入れ、

ひらひらと手を振って屋上と校舎を繋ぐ扉の奥へ消えていった。



■■■■■

「もしもし、虹乃です。」

電話に出ると、慌ただしさを醸し出しながら山本さんの声が聞こえてきた。

「あ!虹乃先生!お忙しいところ、すみません!山本です。」

電話口の向こうでガヤガヤと人の話し声が聞こえる。よほどざわついたところにいるのだろう。

「今、お時間大丈夫ですか?」

「あー。はい。今、ちょうど昼休みなんで。」

「あっ、良かったです。」

今、休み時間であることを伝えると、山本さんの安堵の息遣いが聞こえた。


「こんな時間に電話って、珍しいですね。」

山本さんや出版社の人達は、俺が学生であると知っている。だから、極力、休日や放課後17時以降で打ち合わせの電話や会議の連絡が入る事が多い。

こうして、学校時間中に連絡が入るとなると、よほど急を要した連絡に違いない。

そう思って尋ねると、

「すみません。学校だとは思いながらも、どうしても急ぎの用事で....。」と返事が返ってきた。


今日、放課後、サクラザキ先生と一緒に出版社へ寄ってもらえませんか?

そんな内容の電話だった。


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