54話 は?え?
■■■■■
「「よん、ご...?!」」
俺達は、自分がどんな顔をしているかも忘れて驚いていた。
櫻崎さんなんて動きも止まっている。
「えっと、、、先週の水曜に解禁された書籍の予約販売の予約件数が、すでに4.5万部突破?!」
俺は、自分に言い聞かせるように、確かめるように、今、山本さんが口にした言葉をそっくりそのまま反復した。
「はい。4.5万部です。」
山本さんが冷静にかつ坦々に頷く。
「4.5万……」
櫻崎さんは、その巨額な数字にあてられて、未だ放心状態にある。
「えっと、当社比にはなるんですが、だいたい、書籍、、、の中でもラノベ、単行本の予約販売は1万部を超えると幸先がいいと言われていて...。」
山本さんがファイルに閉じられた資料をペラペラとめくり、照合された統計データをもとに分析結果を発表していく。
だろうな。普通、本ってのは書店に並ぶから売れるものだ。昨今、電子書籍とかも普及してきたが、ハードカバーがあるから売れるようなものだ。
発売前に予約するなんてこと、よほどその作家に期待をしているか、または、表紙を飾るイラストが好みだったのか....。
にしても、予約数だけで4.5万部はエグイ。
俺の最近発売したのでも1.5万部行くか行かないかくらいだったと思う。
「編集部内でも予想以上の売れ行きで、ざわついていました。」
先に結果を知っていたからなのか、こういう予想外に慣れているのか、山本さんは嬉しそうにしているだけで冷静に話を進めていく。
「編集長が『予約部数でこれなら、発売すればもっと伸びるだろう。ネットニュースでも話題になってるみたいだしな』とおっしゃられて、先の役職会議で1巻の重版も続巻も決定しました。あと、これはまだ水面下ではありますがコミカライズ化も話が進んでいます。恐らく今年中に発表かと思います。これは過去類をみないくらいの勢いです。」
「や、馬鹿えぐいですね。」
ものの数秒の山本さんのセリフに何倍にも凝縮された内容が詰め込まれ、思わず俺は苦笑した。
それを見て、山本さんは腰に手を当て人差し指を左右に動かし、器用にチッチッチと舌を鳴らしドヤ顔で言った。
「先生、話はそれだけじゃないんですよ。」
今ので驚いてもらったら困ります。と山本さんが胸を張った。
「と言うと?」
「予想以上の売り上げ効果。そのお陰なのか、歴代最速レベルで音響制作会社からオファーがかかりました。」
「音響制作会社から?」
俺の素っ頓狂な声が会議室に響いた。
音響制作会社、その名の通り、ボイスドラマCD等の制作をしている会社である。
「はい。4か月後に発売する『清楚で可憐な義妹の隠し事』第二巻は、ドラマCD付特装版の制作が決定しました!!!!」
「はや....。」
もう、絶句するしかなかった。
まだ1巻すら出していないのに、続巻決定で、しかも特典の話まで.....。
「もう、本当にびっくりしました。予約開始した瞬間に、件数がどんどん伸びていって……」
嬉しい悲鳴ですね。これは。
そうニコニコと上機嫌で話す山本さん。
ここまでの話で、今日、俺達が呼び出された理由がなんとなく分かった気がした。
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