7話 人気ラノベ作家はタワマンに住んでいる
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7限分の授業をなんとかやり過ごして、ようやく放課後を迎えた。
「かなたー。今から、遊ぼうぜ?」
授業が終わるやいなや、雄大が俺を遊びに誘ってくる。
「だから、今日はパスだって言っただろ?」
朝、言った事、もう忘れたのか?
若年性の病ならば、早めに脳神経内科をお勧めする。
認知症、アルツハイマー、パーキンソン病、昔は老人病なんて言われていた病も、最近は若年化してきているからな。早めの対処が必要だ。
俺は筆記用具と教科書をスクールカバンに詰めて立ち上がる。
「いやー、放課後になれば気が変わってるかと思ってさ」
「陰キャ男子に二言はない」
「ちぇ。奏汰、最近、付き合い悪いぞー」
「....俺にも色々あるんだ」
「まー、今回は問いたださないけどさ、面白い系の話になってきたら、俺も混ぜろよ?」
期待してるぜ! と言いたげな顔で、ニッっと白い歯を見せてくる。
「面白い系の話って....。別に、面白くもなんとも....」
「隠しっこなしだからな!」
まったく、聞いちゃいない。
「ちなみに聞くが、雄大の言う面白い系の話ってなんだ?」
雄大が今朝から言っているワードだったが、あえて無視してきたのに、これ以上は突っ込まない訳にはいかない。
「そりゃーもちろん。捨て猫の飼い主が奏汰の家に訪ねてきて、実はその飼い主があの人気女優、
どや顔で踏ん反りかえる雄大。
色々ぶっ飛んだ設定に俺は言葉を失う。
「....。現実で女優のお宅訪問なんて都合のいい話、あるわけがない。」
「またまたー。妄想を現実にするのが作家の仕事だろー?」
「意味が分からん。
なんだ、そのぶっ飛んだ設定....」
突っ込みながら、俺は、どこかの誰かが昔考えた黒歴史の連載小説を思い出した。
変な方向に話が反れないよう、早々に話を終わらせよう。
「....分かった。分かった。
俺も、いち小説家として、お前の夢を壊さないように努力してみるよ。
じゃぁ、ぼっちで、カラオケでも焼き肉でも楽しんでくれ」
俺は早口にそう言い残し、教室を出た。
「余計なお世話だ!俺は奏汰と違って、友達いっぱいいるわ!!」
背中で、雄大がぶうぶう言っていた。
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駅近くの高層マンション。
その最上階。ここが、今の俺の家である。
俺は住人専用のセキュリティーコードを打ち込み開錠すると、エントランスホールに入り、目の前の3機あるエレベーターの一つに乗り込んだ。高校生の一人暮らしとしては、いささか高級すぎる居住だが、これには色々な事情があった。
まぁ、ここの家賃を片手間に凌いでみせるくらいには作家として売れているので、金銭面の心配は無い。俺は別にワンルームマンションとかでも良いと言ったんだが、
『お前は高校生だが、それ以前に、月○○万以上稼ぐ人気作家だ。そんな奴が築40年のボロ賃貸マンションに住む? 馬鹿か、お前は。ちゃんとセキュリティが確保されている家にしろ。それに、お前の両親も顔が広い。隠蔽されていたとはいえ、お前の事を嗅ぎ回っている奴も少なからずいるかもしれん。
何かあってからじゃ遅い。いいな?』と言って、編集長に押し切られた結果だ。
家賃を払うのは俺なんだが....。
と突っ込みたかったが、実際、編集長より、稼いでいるし、面倒事が嫌いな俺にとって、編集長の言い分も分かるから、
『じゃ、割とセキュリティ万全なマンションで。』と、素直に編集長に従った。で、編集長を信頼し、部屋選びを一任した結果がこれだ。
『誰が、高校生でタワマン、最上階に一人暮らしする奴が居るんだよ!!!!!!!!!!!』
全ての手続きを親代わりで引き受けてくれた編集長には悪いが、俺は、盛大な突っ込みを入れたい。
まぁ、今となっては後の祭りだけど。
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