17話 電話の内容は?
どうしよう。
嫌な汗がたらりと垂れた。
俺の新作が急にポシャったとかだったら。
ラノベのイラストを担当してくれる絵師も決まって、先日、表紙のラフデータを受け取ったばかりだ。8月には刊行できる気で動いてるのに、3ヶ月前にいきなり、『ボツになりました。』とか言われたら、俺、泣く。
俺じゃないけど、別の作家さんで、最近、書籍を発売して一週間後に作品の文章表現に問題が見つかったため、出版社が全国の書店からその本を自主回収したってニュースもあったから。
このご時世、何が起こるか分からない。
どうか、何事もありませんように。
少し恐怖を抱きながら電話を取る。
「はい。虹乃です」
どーでも良い事だが、こういう時にペンネームを名乗るのは作家っぽいなと思う。
『あ、もしもし、先生?おはようございます。山本です。今、お時間大丈夫ですか?』
少し慌てた様子が電話越しに伝わってくる。
「どうしたんですか。こんな朝早く....。今日は、出版社でいつもの打ち合わせをする日ですよね?次回作のプロットとか、特典用の読み切りとか。」
もしかして、山本さんの都合が悪くなり、打ち合わせが出来ないと言う連絡なのかもしれない、と思ったが、違った。
『はい。そうです。今日も17時頃にお待ちしております!』
平然と受け答えしてきた。
だったら、電話の理由は何だ?
「何かトラブルですか?」
思わず聞いてしまった。
『いえ、トラブルと言いますか、その打ち合わせの時、先生に会わせたい方をお連れしても大丈夫かな~と言うご相談でお電話させていただきました。』
「会わせたい人?」
そう言われ、ピンとこなかった。
誰だ?秋に控えるアニメのプロデューサーにはこの前、会って挨拶したし...。
俺に会いたい人って誰だ?
『先生の新シリーズの挿絵を描いて下さる絵師さんなんですけど、先生の大ファンらしく、出来れば一度ご挨拶をしたいとお願いされたので。取り敢えず、先生に確認をと思いまして』
「新作シリーズの絵師...って、、『サクラザキ』先生?....」
『はい。』
『
なるほど。ま、確かに正体不明の名作家を売りにしているからな。
会うか会わないか。
俺の答えは決まっていた。
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